シダックスのロゴと柴山慎一・シダックス取締役専務執行役員

オイシックス・ラ・大地が、シダックスに実施中の株式公開買い付け(TOB)が成立する見通しとなった。シダックスの取締役会が、TOBに対する意見を反対から中立に見直し、シダックス株を持つ投資ファンドがTOBに応募する方針を表明した。TOBを巡っては、シダックスの創業家と取締役の対立が先鋭化した。創業家の方針に異を唱えてきた柴山慎一取締役専務執行役員に、意見を見直した経緯に加え、同社が抱えるガバナンスの問題点を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部副編集長 名古屋和希)

TOB成立で取締役としては一段落
創業家・オイシックス間の覚書に不信感

――オイシックス・ラ・大地が、シダックスに実施中の株式公開買い付け(TOB)が成立する見通しになりました。

 まず一連の騒動に関し、取締役の一員としてステークホルダーの皆さまにご心配をおかけしたことを深くおわびします。

 まだオイシックスによるTOBの実施期間中ですが、TOBに対する意見を反対から中立に見直したことで、取締役会としての仕事は一段落となります。収束にこぎつけることができ、良かったと思います。

――シダックスの創業家は投資ファンドが保有するシダックス株の譲受人としてオイシックスを指名し、その結果TOBが始まりました。取締役としてTOB反対を決めたのはなぜですか。

 オイシックスとの協業に反対していたわけでは決してありません。しかし、不信感が芽生えるきっかけとなったのが、創業家とオイシックスの間で結んでいた覚書の存在です。

 覚書には「オイシックスの給食事業の参入に向けて協業する」といった内容が盛り込まれていました。これは、シダックスの中核である給食事業の譲渡を約束していると取れなくもありません。

 オイシックスがTOBで2割超の株式を保有すると創業家の持ち分と合わせて、6割ほどを握ることになります。両者で給食事業の行く末を決めてしまうのは、ほかの株主に対する公平性の問題も生じてしまいます。手順に問題があると主張してきたわけです。

――9月5日にTOBに対して反対意見を表明しましたが、最終的には中立に見直しました。方針を変えた理由は。

次ページでは、シダックス取締役会がTOBに当初は反対を表明しながらも、意見を中立に見直した理由を柴山氏が説明。シダックスが抱える創業家ガバナンスの問題点も挙げる。また、今回の混乱に伴って発生した情報流出の原因を調べる調査委員会を立ち上げた狙いについても語る。