シダックス本社Photo:Diamond

給食大手のシダックスは5日、食品宅配のオイシックス・ラ・大地による株式公開買い付け(TOB)に反対すると発表した。シダックスの創業家役員はオイシックスによるTOBに前向きだったが、大株主の投資ファンドが送り込む社外役員が反対に回った。実は、両者の対立の影にあるのが、ある外食大手による買収提案だ。提案内容を詳報するとともに、提案を巡る水面下での激しいつば迫り合いについて明らかにする。(ダイヤモンド編集部編集委員 名古屋和希)

シダックスがオイシックスのTOBに反対表明
賛成の創業家と反対の大株主のファンドが対立

 本公開買付けが成立した場合、当社が本来得られるはずだった利益が失われる恐れが高い――。

 給食大手のシダックスは5日、オイシックス・ラ・大地による株式公開買い付け(TOB)に反対する理由をそう述べた。シダックスによる反対意見の表明でTOBは「敵対的」となる。

 今回のオイシックスのTOBは、特定の株主からの株の買い取りを目的としている。特定の株主とは、シダックス株を3割弱保有する投資ファンド、ユニゾン・キャピタル(東京・千代田)である。

 TOBの条件は、ユニゾンが保有する27.02%を買い付け予定の下限とし、上限は33.34%とした。価格は、TOB発表時の8月29日終値の635円を約15%下回る1株541円。つまり、一般株主の応募はほぼ見込めない。

 この異例のTOBの背景にあるのが、シダックスとユニゾンの間の取り決めの存在だ。

 日本のPEファンドの草分け的存在でもあるユニゾンは2019年、経営危機にあったシダックスに出資した。その際、ユニゾンとシダックス創業家で最高顧問の志太勤氏らは、市場価格に関係なく、定められた価格でユニゾンの保有株を売り渡すという株主間契約を結んだ。

 そして、創業家が今年6月、ユニゾンが持つ保有株の売却先をオイシックスに決め、ユニゾンに売り渡しを求めた。オイシックスのTOB価格は、この契約で定めた売却額に基づくものだ。

 そもそも株主間契約が存在する以上、ユニゾンが契約に沿って、売り渡しに応じれば済むようにも見える。

 だが、ユニゾンはTOBに応じない姿勢を示している。なぜか。理由の一つが、未公表の重要事実にあたる事案が存在する可能性がある、との疑念だ。仮に事案があれば、TOBはインサイダー取引規定に抵触することになる。

 実は、ユニゾンが指摘するような事案らしきものは存在する。それは、シダックスがある外食チェーン大手から受けた買収提案である。だが、その提案が「未公表の重要事実」にあたるかどうかで、創業家とユニゾンの見方は真っ向から対立している。

 次ページからは、事態の混迷を招く引き金となった提案に踏み切った外食チェーンの実名とともに、具体的な中身を詳報する。また、提案を巡り、創業家側とファンド側で繰り広げられている水面下での暗闘も明らかにする。