管理職は「自分の力」ではなく、「メンバーの力」で結果を出すのが仕事。それはまるで「合気道」のようなものです。管理職自身は「力」を抜いて、メンバーに上手に「技」をかけて、彼らがうちに秘めている「力」を最大限に引き出す。そんな仕事ができる人だけが、リモート時代にも生き残る「課長2.0」へと進化できるのです。本連載では、ソフトバンクの元敏腕マネージャーとして知られる前田鎌利さんの最新刊『課長2.0』を抜粋しながら、これからの時代に管理職に求められる「思考法」「スタンス」「ノウハウ」をお伝えしていきます。(初出:2021年10月30日)

優れたリーダーは知っている、部下が自然と心を開く「質問のコツ」とは?【書籍オンライン編集部セレクション】写真はイメージです Photo: Adobe Stock

「困っていること」を、
言いやすい状態をつくる

「1on1」を機能させるためには、メンバーに心を開いてもらう必要があります。

 そのためには、あまり焦らずに心理的な距離を縮めて、安心感をもってもらうまで、「待つ」ことが大切です。そして、「1on1」の場は、あくまでも管理職がメンバーをサポートするために設けられるもので、決して、何かを責めたりするような場ではないことを実感してもらう必要があります(詳しくは、こちらの記事)。

 ただし、もちろん、心を開いてもらうことが目的ではありません。

 当たり前のことですが、仕事について話し合って、建設的なアクションに結びつけていくことが目的です。だから、メンバーの警戒心が解けてきたと思えたら、少しずつ仕事に関する話題に踏み込んでいかなければなりません。

 とはいえ、いきなり「君がいまやっている仕事、うまくいってる?」「何か問題は起きてないかな?」などとあけすけに問いかけると、再び防御的なスタンスに立ち戻ってしまうものです。上司が部下に聞けば、「本当のこと」を教えてくれると考えるのは、単なる「上司の甘え」にすぎないのです。

 そこで私は、そのメンバーが業務上のことで悩んでいるんじゃないかというポイントについて、それを匂わせるような話をするようにしていました。

 例えば、他部署の知人から、そのメンバーがかかわっている社内横断的なプロジェクトが、部署間の対立で少々揉めているらしいと聞いたとします。私としては、メンバーがその当事者として苦慮していることがあれば、サポートに入ってあげたいと考えていますが、あまり“土足で踏み込む”ようなこともしたくない。そんなときには、「例のプロジェクト、頑張ってくれてますね。どう? あのプロジェクトの仕事って楽しい?」というふうに話題を振ってみるのです。

優れたリーダーは知っている、部下が自然と心を開く「質問のコツ」とは?【書籍オンライン編集部セレクション】前田鎌利(まえだ・かまり)
1973年福井県生まれ。東京学芸大学で書道を専攻(現在は、書家として活動)。卒業後、携帯電話販売会社に就職。2000年にジェイフォンに転職して以降、ボーダフォン、ソフトバンクモバイル株式会社(現ソフトバンク株式会社)と17年にわたり移動体通信事業に従事。その間、営業現場、管理部門、省庁と折衝する渉外部門、経営企画部門など、さまざまなセクションでマネージャーとして経験を積む。2010年にソフトバンクアカデミア第1期生に選考され、事業プレゼンで第1位を獲得。孫正義社長に直接プレゼンして数多くの事業提案を承認され、ソフトバンク子会社の社外取締役をはじめ、社内外の複数の事業のマネジメントを託される。それぞれのオフィスは別の場所にあるため、必然的にリモート・マネジメントを行わざるを得ない状況に立たされる。それまでの管理職としての経験を総動員して、リモート・マネジメントの技術を磨き上げ、さまざまな実績を残した。2013年12月にソフトバンクを退社。独立後、プレゼンテーションクリエイターとして活躍するとともに、『社内プレゼンの資料作成術』『プレゼン資料のデザイン図鑑』『課長2.0』(ダイヤモンド社)などを刊行。年間200社を超える企業においてプレゼン・会議術・中間管理職向けの研修やコンサルティングを実施している。また、一般社団法人プレゼンテーション協会代表理事、情報経営イノベーション専門職大学客員教授、サイバー大学客員講師なども務