「悩み」に応えることで、
「信頼関係」を強固にする

 この「楽しい?」という質問はなかなか有効です。

「うまくいってる?」とか「順調?」という聞き方をすると、「進捗確認」をされているように受け取られて、メンバーの口が重くなることがありますが、「楽しい?」と聞かれたら、そのような警戒心を抱かれない確率が高いからです。

 もちろん、反応の仕方は人それぞれです。

 もともと不平不満の多いタイプの人は、「楽しい?」と聞かれると、すぐに「楽しくないですね」と応えることが多いですし、真面目なタイプの人は、不満を口にしたくないからか、「まぁ、楽しいですね」と応える傾向が強いように思います。

 でも、ここで注目すべきなのは、「言葉」ではなく「表情」です。言葉では「まぁ、楽しいですね」と言いながらも、表情を一瞬曇らせることがあります。そのような場合には、その仕事に「何か問題がある」と察することができるわけです。

 そのときには、さらに具体的な話を振ってみます。

 例えば、「この間、たまたまあのプロジェクトの議事録を読んでたら、◯◯部の△△さんが××と言ってたね。あれを言ったら、反発する部署もありそうだよね?」などと聞いてみます。

 すると、「そうなんですよね。実は……」と実情を打ち明けてくれることもあり、そこから、自然な形で、私がそのプロジェクトに関わっていくことで、そのメンバーをサポートすることができたりします。あるいは、そのメンバーがプロジェクトから外してほしいようであれば、別のメンバーと交代させるという対応を取ることもできるでしょう。

 このように、できるだけ自然な形で、メンバーの「困りごと」や「悩み」を打ち明けてもらい、それを解消するために具体的なアクションを起こすことが重要です。もちろん、アクションを起こしても、結果的に「悩み」の解消に結びつかないこともあるでしょうが、メンバーにとっては、「自分のために管理職が汗をかいてくれた」というだけでも嬉しいものです(ただし、メンバーを喜ばせるために、“できない約束”をしてはいけません。結果的に信頼を失うだけです)。

 そして、「あの人に相談したら、なんとかしてくれる」という信頼を勝ち得ることができれば、こちらが探りを入れなくても、メンバーのほうから積極的に「悩み」を打ち明けてくれるようになります。ここまでくれば、「1on1」は完全に軌道に乗ったと言えるでしょう。