「中国不安」は恐れるに足らず!米著名投資家が株式市場の懸念を一蹴する理由Photo:Kevin Frayer/gettyimages

中国経済の先行きを巡り、「ゼロコロナ」政策や不動産市場の混乱を受けて不安感が高まっている。市場では、株式市場への影響を懸念する声も少なくないが、米著名投資家のケン・フィッシャー氏はそうした心配は誇張されたものだと説く。

中国経済を巡る懸念は
真新しいものではない

 中国の冷え込みは日本経済を危うくし、TOPIX(東証株価指数)や世界株式をさらに沈めるだろうか?世界中の市場関係者が中国の不動産を巡る混乱と、「ゼロコロナ」政策が中国の、ひいては世界の成長を止めると懸念する。

 結局のところ、中国は世界の「成長エンジン」ではないのか。そして、日本の自動車・機械・テクノロジー輸出はリスクにさらされていないのか――。実際、影響はそれほどではない。順々に理由を説明していこう。

ケン・フィッシャ―氏Ken Fisher/運用資産十数兆円規模の独立系運用会社、フィッシャー・インベストメンツの創業者。米国の長者番付「フォーブス400」常連の億万長者。ビジネスや金融分野の出版物に多数寄稿し、投資関連の著書も数多い。父はウォーレン・バフェット氏が師と公言し、「成長株投資」の礎を築いた伝説的投資家である故フィリップ・フィッシャー氏

 まず、中国に関わる懸念は何も真新しいものではない。確かに今まで関税を巡る緊張からアジア太平洋の安全保障懸念まで、しばしばニュースの見出しを飾ってきた。こうしたものが登場するたびに、市場観測筋は身をすくめる。だが、曖昧にすぎない不動産市場を巡る恐怖症と依然存在するロックダウンのリスクを除くと、現在の懸念は具体的だがおおむね重複し、遅行的だ。

 確かに、例えば中国デベロッパーの2022年上半期の利益は前年比87%減。また、商業用不動産の売上高は前年比28%減、同様に居住用不動産の売上高は30%減だ。そして、返済ボイコットにより何兆元もの住宅ローンが未払いとなりかねない状況ではある。

 現在のアナリストのコンセンサス予想では、2022年の中国の国内総生産(GDP)成長率は3.6%だ。コロナ禍でゆがんだ20年を除くと、中国では1990年以来の最低である。だが、これは本当に悪いことなのだろうか?