英国のリズ・トラス首相の辞任は、高インフレと金利上昇がいかに政局を左右し、政策余地を狭めているかを浮き彫りにするものだ。世界各国の政府はこの10年間、低インフレと超低金利のおかげで、投資家を警戒させることなく財政支出や債務を拡大する余裕があった。そうした日々は終わった。中央銀行が金融引き締めに転じたため、政治指導者が借り入れを行う際には、その返済方法を疑問視する声とこれまで以上に向き合わざるを得なくなっている。その一因は、借り入れコストが上昇し債務の返済負担が高まっていることや、政府が新型コロナウイルスの流行時に債務をすでに膨らませていたことにある。英国はその典型だ。現在、債務の国内総生産(GDP)比は約100%で、コロナ流行前の約80%を上回る。