女性のバストを「スイカ並み」と表現、男性週刊誌“内輪ノリ”の罪深さ写真はイメージです Photo:PIXTA

「ストレスと寝不足で豊満バストがしぼんでしまわないか心配」。会社でこんなことを同僚に言う社員がいたら大問題だが、メディアが作る記事の中では、いまだにこのような表現が許されている。(フリーライター 鎌田和歌)

「スイカなみ」とバストを表現する失礼で幼稚なメディア

「今の子供達にはこれが普通でないことをしっかり理解してほしい」

 タレントのIMALUさんが、10月10日にツイッター上でこうツイートした。IMALUさんが指摘したのは、ネット記事に書かれていた女性蔑視的な表現についてだ。

「あるネット記事で18歳の女性芸能人のバストを『スイカなみ』と表現し、バストに意識がいって彼女の話が入ってこないと書かれていた。最後の文章が『ストレスと寝不足で豊満バストがしぼんでしまわないか心配』というのもクソキモ」(ツイートより)

 絵文字などを使っているので柔らかい印象ではあるが、強い問題意識を持っていることがうかがえる文章だ。IMALUさんは9月にも、内閣府が運営する性暴力の悩み相談「Cure Time」を紹介するニュース記事をリツイートしており、性暴力や性差別への関心が高いのかもしれない。

 ツイートで指摘された記事は、水道局のアプリを広報するイベントに出席した18歳の女性芸能人について、「ボディーに密着した衣装のおかげで『内容が入ってこない』と記者から悲鳴が上がっていた」と報じる記事。「成長を続ける○○のバストがパンパンで」「胸元に目がいって仕事になりませんでした」といった、現場にいた「芸能記者」のコメントが掲載されている。※記事内で○○は実名。

 女性芸能人の、イベントの趣旨に合わせた発言よりも、彼女の性的な身体的特徴の方にばかり目についてしまったというのだから、失礼で幼稚な内容である。

 下世話な週刊誌による「ネタ」なのだからいちいち目くじらを立てなくても…といった意見もあるかもしれないが、男性向け週刊誌の内容が雑誌の中で完結していた時代とは異なり、今はそのホモソーシャル(※)な内容がネット上で誰の目にも入ってくる時代なのだから違和感を持つ人がいて当然だ。

※ホモソーシャル…女性や同性愛者を排除し、異性愛者の男性の絆だけを深めるような空間やその雰囲気。

 週刊誌「SPA!」が「ヤレる女子大生ランキング」特集で物議を醸し、掲載された大学から抗議を受けたのは2019年1月だった。当時も抗議署名に対して、このぐらいいいじゃないかといった反応が業界内からあったが、結局編集部が謝罪した。

 なお、NHKのアナウンサーが出身地の名産品とかけて身体的特徴を「スイカップ」と取り上げられてからは、19年ほどがたっている。

 ジェンダーにまつわる考え方は大きく変化しつつあるのに、古い価値観を引きずったままのメディアが、たまにこうして目立ってしまう。