習氏の権力拡大 「厳しい」時代に身構える台湾Photo:NurPhoto/gettyimages

【台北】民主的な自治を行うこの島の政治および軍事指導者たちにとって、台湾海峡の向こう側の景色は以前よりはるかに不吉に見える。

 中国共産党は21日、党規約を改正し、「台湾の独立に断固として反対する」との文言を盛り込んだ。それまでは中国国民全体の結束強化のみをうたっていたが、より強い表現となった。翌日には、習近平氏が党総書記(国家主席)として3期目(1期5年)入りを果たすと、党は政治・軍事指導部のメンバーを入れ替え、台湾問題に精通した軍司令官を米国防総省の中国版に相当する組織の幹部に昇格させた。

 地理的に台湾に最も近い部隊を監督する中国人民解放軍(PLA)東部戦域司令部の前司令官、何衛東大将は今回の人事で、中央軍事委員会の副委員長を務めることになった。何氏にとっては異例の速さでの昇進で、同氏は習氏を支える2人の副官の1人として、PLAを率いることになる。

 台湾の政府関係者やアナリストらによると、今回の人事は、中国政府の台湾に対する姿勢が厳しくなる一方である可能性が大きいことを示しているという。中国共産党は台湾を支配下に置いたことは一度もないが、台湾は不可分の領土だと主張している。

 台湾の邱国正国防部長(国防相)は24日、中国政府の最近の動きについて議員らに説明した際、台湾海峡の状況は「厳しいだけではない。警戒態勢をわずかでも緩めれば、非常に深刻な事態になる可能性がある」と述べた。