PHOTO: JESSICA DEEKS FOR THE WALL STREET JOURNAL
国連が後ろ盾となった金融機関の有志連合に参加する米銀大手の「反乱」は鎮められたものの、生じた亀裂は、温暖化ガス排出量の実質ゼロ(ネットゼロ)に向けて必要な巨額資金の調達を目指す同連合を弱体化させる可能性がある。
「ネットゼロのためのグラスゴー金融同盟(GFANZ)」と呼ばれるこの有志連合に、大手銀行の参加を取りつけたことは、英グラスゴーで昨年開催された第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)における注目すべき成果だった。だがそれ以降、エネルギー不足に加え、政治家や規制当局からの圧力が高まったことで、米銀大手は脱炭素化ルールが厳しすぎると感じ、反発を強めている。
GFANZに加盟したことを一部の銀行は後悔している、と事情に詳しい複数の関係者は明かした。組織としては存続する見込みだが、影響力は限定的になるかもしれない。
「GFANZはもうコントロールが効かない」とマーガレット・ペロソ氏は言う。同氏はヴィンソン&エルキンス法律事務所のパートナーで、米ウォール街の金融企業に気候変動戦略について助言しているが、GFANZの問題では助言していない。「彼らは権威を失ったと思う」
銀行をはじめ各企業は、顧客や投資家から気候変動対策を迫られ、化石燃料への資金供給や使用量を減らすこと、そして削減できない分は相殺(オフセット)することを約束してきた。昨年11月のCOP26開催に先立ち、銀行や投資家はGFANZへの加盟を決めた。
とはいえ、ロシアのウクライナ侵攻によって世界的な化石燃料依存が浮き彫りとなる前から、銀行側は気候対策推進派が求めるほど急速にエネルギー生産者への資金提供を減らせないと主張。ここ数週間、その信念は銀行グループ内の緊張を高めていた。