地球誕生から何十億年もの間、この星はあまりにも過酷だった。激しく波立つ海、火山の噴火、大気の絶えまない変化。生命はあらゆる困難に直面しながら絶滅と進化を繰り返した。ホモ・サピエンスの拡散に至るまで生命はしぶとく生き続けてきた。「地球の誕生」から「サピエンスの絶滅、生命の絶滅」まで全歴史を一冊に凝縮した『超圧縮 地球生物全史』は、その奇跡の物語を描き出す。生命38億年の歴史を超圧縮したサイエンス書として、ジャレド・ダイアモンド(『銃・病原菌・鉄』著者)から「著者は万華鏡のように変化する生命のあり方をエキサイティングに描きだす。全人類が楽しめる本だ!」など、世界の第一人者から推薦されている。本書の発刊を記念して、内容の一部を特別に公開する。

数億年後、地球上のほとんどの生物が「一つの生命体」になるという超衝撃事実Photo: Adobe Stock

2億5000万年後の超大陸

 いまから二億五〇〇〇万年後、大陸はふたたび超大陸へと収束し、これまでにない巨大な大陸が誕生する。

 それは、超大陸パンゲアと同じように、赤道をまたいで横たわる。

 内陸の大部分はもっとも乾燥した砂漠となり、巨大な高さと広がりを持つ山脈に取り囲まれる。

 もはや、生命の痕跡はほとんど見られない。海では、生命はより単純になり、その多くが深海に集中することになる。

地中深くに生息する生命体

 陸地は全く生命がいないように見える。だが、それは錯覚だ。生命はまだ存在するだろうが、見つけるにはとても深くまで掘らなければならない。

 現在でも、膨大な数の生命体が地中深く、植物の根よりも深く、菌根菌やナラタケなどの菌類よりもさらに深く、人知れず生きている。

 地中深くに生息するバクテリアは、鉱物を採掘し、それを別の形に変換して得るエネルギーで、細々と生計を立てている。

小さな生き物たち

 そして、地中の隙間で、このようなバクテリアは、さまざまな小さな生き物に捕食されている。

 その小さな生き物は、ほとんどが線虫だ(訳注:原書では回虫[roundworms]だが、ここではより広い意味の線虫とした)。

 線虫は、動物のなかでもっとも軽視され、無視されている生き物だ。

 ある科学者は、地球上のすべての生き物が、線虫を除いて透明になったとしても、木々、動物、人間、地面などの輪郭が、うっすらとした幽霊のような姿で見えるだろうという。

 そう、線虫は、それほど動物や植物の体内にはびこっているのだ。

何千年も生き続ける

 地中深い生物圏の生命はのんびりと活動している。

 それと比べれば、氷河の動きは、飛び跳ねる春の子羊に見えるほどだ。

 実際、地中の生命活動は、死とほとんど区別がつかないほどゆっくりしている。

 バクテリアは時間をかけて成長し、滅多に分裂せず、何千年も生きつづける。

 だが、世界が温暖化し、大気中の二酸化炭素がますます不足するにつれ、地中深くの生命活動は速さを増すだろう。

生命体の最後の生き残り

 熱そのものが原動力となるからだ。そして、上空から新しい種類の生き物が侵入してくる。

 遠いむかし、菌類、植物、動物と呼ばれた、かろうじて出自が想像できる複合体であり、地球表面付近の生命体の最後の生き残りだ。

 この超生物たちは、地中深くでゆっくりと動くバクテリアをはたらかせ、エネルギーや栄養分と引き換えに、安全な住処を提供する。

 光合成はもはや過去のものとなった。

 超生物の菌糸は、地殻のなかをうねりながら、より多くの栄養、より多くの生き物を集め、ある日、地球の夜更けに、すべての超生物の糸が出会い、融合する。

 そして最後に、おそらく、生命は光の枯渇にあらがい、一つの生命体になるのだ。

(本原稿は、ヘンリー・ジー著『超圧縮 地球生物全史』〈竹内薫訳〉からの抜粋です)