経済の活力をそぐ習氏一強体制の強化

 党大会において、習氏は7人の政治局常務委員のうち4人を交代させ、李氏ら側近を新たに任命した。これでさらに長期の支配体制の確立を目指していることだろう。

 中国の政策運営の軸は、経済成長優先から、体制強化優先に大きくシフトした。経済政策の指揮を執る首相に任命されるとみられる李強氏にとって、構造改革を目指すことは、歴代の首相以上に難しくなるだろう。党大会後の中国株の下落は、そうした懸念の高まりに影響された。

 党大会後、中国経済の厳しさは一段と高まっている。国家統計局が発表した10月のPMI(購買担当者景況感指数)は、製造業・非製造業ともに景気の回復と悪化の境目である50を下回った。

 また、不動産バブルの崩壊によってデベロッパーの経営は悪化基調だ。住宅価格は下落し、過剰生産能力を下支えしてきた不動産開発は急速に冷え込んでいる。加えて、ゼロコロナ政策が続くことも旅行や消費、生産活動の足かせになっている。

 さらに、党大会では習氏が共同富裕の実現に、より強力に取り組む考えを示した。競争よりも平等を重視する考えだ。

 リーマンショック後の中国経済において、雇用創出に大きく貢献したIT先端企業などの成長期待は大きく低下している。株価の推移を見る限り、さらなる締め付け強化を危惧する海外投資家が増えている。

 本来であれば、中国は党主導の経済運営から、多様な価値観が反映され、より自由が認められた社会と経済の運営に政策のかじを切るべきだ。それこそが中国経済のダイナミズム向上に寄与するだろう。

 しかし、今後の中国はそれとは逆の方向に向かう可能性が高い。習氏が支配体制を強化するためには、貧富の格差拡大を食い止めなければならない。そのために、習氏はIT先端企業に対する規制を強め、低所得層への所得移転を強化するとみられる。それは、中国経済の活力をそぐ。