多くの国民が不動産投資に狂奔した中国で、住宅の取引が停滞している。今回、注目したのは中国の競売市場だ。借金を抱える法人や個人の住宅を差し押さえ、金に換えて弁済するのが競売で、中国ではアリババなどのオークションサイトがこれを行っている。しかし、最近の“売り逃げラッシュ”で、競売物件はほとんど買い手がつかない状況だ。(ジャーナリスト 姫田小夏)
もはやバナナのたたき売り、「20円」の物件も!?
上海の浦東新区は、競売物件が目立つエリアの一つである。2022年10月、浦東新区のマンションの1戸が競売にかかっていたが、入札の締切日になってもその住戸は買い手が現れず、ついに「競売流れ」となってしまった。
債務者は浙江省の出身者だ。裁判所が提示した情報からわかるのは、32棟からなる大規模物件のうちの一戸を2010年に手に入れ賃貸運用していたということ。しかし、借金返済が滞り、手持ちの物件が裁判所によって差し押さえられた。
査定額は326万元(約6520万円)だったが、それを下回る261万元(約5220万円)で入札が開始された。しかし、“2割引き”にしても落札者は現れなかった。
筆者はこの物件を、最大級といわれるアリババの「タオバオ」のオークションサイトで検索した。
中国における競売市場は“住宅の第二の流通市場”ともいわれ、特に上海などの一級都市では、投資家など買い手の熱い注目を集めてきた。だが、最近は査定値を下回る価格での“出品”も少なくなく、“出品”しても入札者はゼロ、という「競売流れ」が少なくない。最低入札価格を「1元(約20円)」とする“訳アリ”の高級物件さえも目に付く。
“売り逃げラッシュ”が本格化しているのか、中国の高級マンションとても “バナナのたたき売り”状態だ。