架空の土地で夢を買う人がいるから成り立つビジネス

 しかし、これは言ってみれば、抜け穴を利用したビジネスだという見方もできます。この販売が合法か非合法かという問題については結論はまだ出ていませんが、さまざまな解釈があるのは事実です。

 月の土地の販売を始めた頃は、こんなに商業宇宙開発が進むとは想定していなかったのだと思います。月面探査や月面開発が進まないことが前提となっていて、土地を買った人も、自分の土地を見に行けないことを承知して、架空の土地で夢を買っているのです。

 しかし、今の状況を見てみると、このビジネスモデルが崩れるときは意外に早く来てしまうかもしれません。というのは、ジェフ・ベゾスやイーロン・マスクのようなカリスマ経営者が、月や火星を目指して大型ロケットを開発しているからです。

 商業宇宙開発は一気に加速し、もはや月は行けることを前提にして、民間も月旅行や月面基地開発、月の資源利用を目指しています。

 もし、自分の土地を確かめに月に行ける人が出てきたとき、どうなるのでしょうか。

 ただ、月の土地を所有するという「架空のロマン」に価値を見出す人がいる限り、この先も続くビジネスなのかもしれません。こんなビジネスが出てくるのも、宇宙だからということなのでしょう。

(この原稿は書籍『宇宙ビジネスの衝撃――21世紀の黄金をめぐる新時代のゴールドラッシュ』から一部を抜粋・加筆して掲載しています)