ほんの数日で、サム・バンクマンフリード氏(30)は暗号資産(仮想通貨)のヒーローから悪役に成り下がった。10億ドル(約1390億円)の資産は崩壊し、米司法省と米証券取引委員会(SEC)の捜査に直面している。自身が率いる仮想通貨取引所FTXトレーディングは破綻し、暗号資産の未来に対する多くの希望も失われた。バンクマンフリード氏(通称SBF)は外見上穏やかな人物で、これまでは業界をリードする「救世主」だった。FTXの財務状況は不透明だったものの、ツイッターや一連のメディアのインタビューではざっくばらんな人物に見えた。FTXのバハマの拠点では、ビル・クリントン、トム・ブレイディ、ケイティ・ペリーといった著名人が、バンクマンフリード氏がデジタル資産を中心とする高度な金融システム構想を宣伝するために主催した会議に一緒に登場した。彼は最近、世界初の1兆ドル長者になると語っていた。政治家や大義のために大金をつぎ込み、社会に与える前向きな影響を最大化することを目指し、若者が積極的に寄付する「効果的利他主義」運動の提唱者にもなっている。