テレンス・キーリー氏は米資産運用大手ブラックロックに約10年間在籍した後、一般的な認識とは異なる結論に達した。「ESG(環境・社会・企業統治)はうまくいかない」というものだ。キーリー氏は同社在籍時、中央銀行や財務省、ファミリーオフィス、政府系ファンドとの関係を醸成するグループの統括者を長年務めた。これら投資家の一部は政治家やアクティビスト(物言う株主)からの圧力にさらされ、ESG要素が不十分な企業への投資を避けようとした。ブラックロックは顧客が自らと同じ価値観を持つ企業に資金を振り向けるのを支援した。キーリー氏は、ESG戦略がリターンの創出で信頼できるものでもなければ、変革に向けた真の起爆剤でもないことが明らかになった、と述べた。同氏は新著「Sustainable: Moving Beyond ESG to Impact Investing(サステナブル:ESGを超えてインパクト投資へ)」の中で、投資家はESG指数から「持続的な環境・社会問題を抱える企業」に資金を移し、そうした企業に変革を促すべきだと主張している。