FTX崩壊がバハマ直撃 仮想通貨企業誘致のツケFTX新社屋の建設予定地
PHOTO: ROBYN DAMIANOS FOR THE WALL STREET JOURNAL

【ナッソー(バハマ)】昨年、暗号資産(仮想通貨)交換業者FTXのある幹部がバハマの首都ナッソーの銀行を訪れた。海辺の土地を購入し、巨大な新本社を建設するという野心的な計画に会社資金450万ドル(約6億2600万円)を投じるためだった。

 その幹部、ライアン・サラミ氏はすぐさま取引をまとめた。FTXは当時、ナッソー周辺の不動産を買いあさっており、サラミ氏の案件もそのほんの一部だった。内情に詳しい関係筋が明らかにした。バハマの首相は4月、FTX幹部らとともに着工式に出席した。ところが、本格的に建設が始まることはなかった。FTXは今月、経営破綻に追い込まれ、保有する不動産は破産法の管理下に置かれた。

 幻に終わった新社屋は、FTXがバハマにもたらした夢と、破綻劇で高まる不満の双方を象徴する。カリブ海の島国バハマは、業界に優しい規制を確約することで仮想通貨企業の呼び込みに注力してきた。これは、香港からの本社移転を昨年決めたFTX創業者のサム・バンクマンフリード氏がまさに求めていた条件だ。

 バハマには他にも仮想通貨企業が進出していたが、従業員向けに多数の車をリースするなど、最も羽振りが良かったのはFTXだった。これについてはウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)が報じている。FTXは、プロゴルフ選手タイガー・ウッズ氏や人気歌手・俳優のジャスティン・ティンバーレイク氏らが投資家として名を連ねるプライベート高級リゾート「アルバニー」の物件を複数購入。しかし、FTXの仕事で生活していた地元のケータリング業者や運転手、清掃業者は今、厳しい状況に直面している。