2階建てと比べた
平屋のメリットとデメリット

 とはいえ、自身が育ってきた環境とは異なる平屋に若者がひかれる理由はどこにあるのか。平屋のメリットは、まず全年齢が暮らしやすい点にあると言う。

「一番のメリットは階段がないこと。家全体に目が行き届き、子供や高齢者、ペットにとっても危険が少ない。洗濯物をわざわざ2階へ上がって干す手間もなく、掃除も楽ちん。家事動線は上下移動がなくスムーズになるので、仕事に育児にと忙しい現代のファミリー層にとっては非常に暮らしやすいと思います」

 さらに2階建てと比べて、丈夫につくるための制約が少ない。そのため自分好みの間取りでデザイン性の高い居室を作りやすい。

 天井を張らずに屋根勾配や梁を見せる仕上げにすれば天井高も確保でき、流行の抜け感のある家づくりも可能となる。将来的に部屋同士を仕切る壁を取り除いたり、新たな開口部を設けたりと、子育てや老後のライフサイクルに応じた間取りの変化に柔軟に対応できる点も、平屋の魅力。

 平屋は2階建てと比較すると、法律(建築基準法)で求められる壁の量が少ないため、構造の自由度を保ちつつ、耐震性にも優れているという。

「マンションとの最大の違いは、土(外部空間)とダイレクトに繋がれること。アウトドアライフを満喫できます。近年は室内に広めの土間を設け、庭とつながった半屋外の多目的空間とするプランが人気です。LDKを大きくとり、部屋を扉や壁で仕切らないなど、家全体を1室のように扱った開放的なデザインが、若い世代にもウケています。平屋は廊下が増えやすいのが弱点ともいえますが、LDKから直接出入りできる部屋を設けることで、廊下も少なくできます」

「熊本では地震の後に平屋の注文が伸び、平屋だけの住宅展示場もできた、という話を聞きます。2階建てで丈夫な耐震等級3の家にすると壁の量が多くなってしまい、大きな窓が設けにくく、閉塞感を覚える空間になりがちです。平屋であれば、2階建ての1階部分に比べて半分以下の壁の量で、耐震等級3の家が実現できます。万が一火災が発生しても、上下移動がないため避難もスムーズにできますね」

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 デメリットとしては、2階建てより屋根面積が大きくなるため、その部分の断熱処理に手間がかかること、同様に基礎部分も増えるためコンクリート工事にコストがかかる点が考えられる。しかし、コストに関しては長期的に見ることも重要だ。

「平屋はコスパが…と思われがちですが、一般的な2階建ての場合、外壁などの補修に足場が不要です。補修頻度も一般的な2階建てより少なく済む傾向にあるので、実は維持費が抑えられる。長期的なメンテナンスコストを考えると大きな差にはならないのではないでしょうか」

 コロナ禍で見直されるお家時間の過ごし方。日本家屋の暮らしやすさと旬なデザインが共存し、多様なライフスタイルにも対応できる平屋人気はまだまだ続きそうだ。