日産自動車Photo:Diamond

行動制限が解除され、入国制限も大きく緩和されるなど、人々の生活は少しずつ「コロナ前」に戻りつつある。だが、一難去ってまた一難。ビジネスの世界では、円安や資材高が多くの企業を混乱のうずに巻き込んでいる。その状況下で、好決算を記録した企業とそうでない企業の差は何だったのか。上場企業が発表した直近四半期の決算における売上高を前年同期と比べ、各業界の主要企業が置かれた状況を分析した。今回はトヨタ自動車、ホンダなどの「自動車」業界5社について解説する。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)

スズキが約4割の大増収
日産も3割超の増収で復活の兆し

 企業の決算データを基に「直近四半期の業績」に焦点を当て、前年同期比で増収率を算出した。今回の対象は以下の自動車業界5社。対象期間は22年5~9月の四半期(5社いずれも22年7~9月期)としている。

 各社の増収率は、以下の通りだった。

・トヨタ自動車
 増収率:22.2%(四半期の営業収益9兆2182億円)
・ホンダ
 増収率:25.0%(四半期の売上収益4兆2558億円)
・日産自動車
 増収率:30.2%(四半期の売上高2兆5249億円)
・スズキ
 増収率:39.3%(四半期の売上高1兆1541億円)
・SUBARU
 増収率:29.8%(四半期の売上収益9168億円)

 自動車業界の5社は、いずれも2桁増収となった。

 5社がそろって2桁増収を果たしたのは、新型コロナウイルス感染拡大「第1波」からの反動増が目立った21年4~6月期以来、5四半期ぶりである。

 このうち日産自動車は、22年1~3月期、22年4~6月期と2四半期連続で、増収率が5社中「ワースト1位」に沈んでいた。

 だが今四半期は、一転して3割超の大幅増収を成し遂げ、業界最大手であるトヨタ自動車の増収率を上回った。

 復活の兆しが見える日産自動車では、今夏発売した電気自動車(EV)「サクラ」が22年12月に軽自動車として初めて「日本カー・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、話題を呼んでいる。

 また、増収率が5社中トップに立ったスズキは、23年3月期第1四半期(22年4~6月期)の四半期増収率(25.8%)からさらに拡大。コロナ禍・半導体不足・資材高の「三重苦」が続く中で好調を維持し、こちらも増収率でトヨタ自動車を上回った。

 これまで苦しんできた日産自動車が増収に転じた要因は何か。そしてスズキの好調が続いている要因とは?次ページ以降で、各社の増収率の推移とともに解説する。