実際に断り文を生成すると、予想外の結果が…

 早速、忘年会の参加を断る文章を生成してくれるAIについてだが、これは“AIライティングアシスタントツール”なる触れ込みの「Catchy」というサイトで会員登録などを行えば、とりあえず無料で文章を生成できるようである。
 
 最近のAIは絵を描いたり曲を書いたりと進歩が目覚ましく、当然作文だってお手の物である。文章の分野では「まだ人間が作った方がクオリティーが高い」という確信があるが、これが油断や慢心となる未来もそう遠くないかもしれない。なんなら今こう書いている瞬間が、まさに油断と慢心であるかもしれない。文章生成AIが台頭すれば、筆者のごとき“手動文章生成おじさん”は真っ先に淘汰される存在であることに、くれぐれも留意しておかなければならない。
 
 今から筆者はこの恐れと心配を乗り越えて、AIを用いて文章を生成するが、これはAIの働きを見て楽しむと同時に、筆者の職の先行きを占う、わりと重ためな試みでもある。
 
 さて、くだんのCatchyのAIだが、「なぜ忘年会に行けませんか?」と設問があり、これに500字以内で答えれば参加お断り文を作ってくれるらしい。「文章の雰囲気」という項目もあり、ベータ版では丁寧・カジュアル・大胆の三つから選べるようである。
 
 なぜ忘年会に行けないのか――架空の理由をでっち上げるとはいえ、難しいところである。

 筆者は「足を骨折して歩行が困難なため」とした。骨折しても松葉杖などを使えば、難儀とはいえ移動は可能であるから、忘年会会場に行こうと思えば行けるわけである。そう考えている相手に自分の欠席を納得してもらうだけの説得力を、「骨折」という材料のみで持たせることができるか……これを判断すべく、この質問文とした。少し難しくて意地悪ではあるが、AIのお手並み拝見である。
 
「足を骨折して歩行が困難なため」と入力して終わろうとすると、「よりよいコピーを作成するためにもう少し詳しく」といったメッセージが出てきたので、もう少し踏み込んで書くことにした。

「足を骨折して歩行が困難なため。慣れない松葉杖の移動で手のひらに血まめができており、すでに日々の出勤でそれが破裂して手、服、杖が血まみれになっている。また、会場となっている居酒屋は雑居ビルの3階にあり、階段以外の移動手段がない。もし階段で転倒して大けがを負うことになったら、楽しいはずの忘年会を台無しにしてしまう。だから私は忘年会に参加しない方がいいと思う。」(178字)

 と入力し、文章の雰囲気は「丁寧」を選択して結果を待つ。5秒ほどで文章が生成された。以下原文ママである。

「このたびは、貴社の忘年会へのご招待を残念ながら辞退させていただきます。私は現在持病のため歩行が困難で、特に階段の昇り降りは手に負担がかかります。すでに手にはマメができ、階段の上り下りで転倒した場合、大怪我をするのではないかと心配です。忘年会を楽しむことが第一なので、自分も他人も危険にさらすわけにはいきません。皆さんにとって大切な節目なので、欠席するのは心苦しいのですが、まずは自分の安全を最優先させなければと思います。」(211字、原文ママ)

 これは正直、侮っていた。血マメができる原因について「松葉杖→階段」といった変更はあったものの、ここまで勘所を押さえた文章をAIが書くとは思ってもみなかった。悔しいが、素晴らしいと言わざるを得ない……。どこが素晴らしかったか。
 
 元の文章(筆者作)は全体的に言い訳じみていて、またネガティブな雰囲気に満ち満ちている。読んでいる人に何か嫌な気分を植え付ける趣がある。忘年会に誘った側からすると、そんなことをくどくど聞かされるくらいなら「行けません」の一言だけで答えてくれた方がマシだった――という気さえしてしまうはずである。
 
 だがAI生成の文章は、ネガティブさが一切ない。元の文にあった「血まみれ」などの単語を排し、不具合の程度の描写が控えめに抑えられたことで、聞き手の心配を自然に誘発させることに成功している。また、元の文にあった「私が、私が」のトーンが消え、忘年会に参加する他の皆さんを自然な形で案じる配慮まで見せる人間的成長っぷりである。これはお見事というほかない。なお、文章の雰囲気「カジュアル・大胆」も試してみたが、この「丁寧」が一番よかった。