さまざまな「環境の変化」により、多くの人が将来への不安を抱え、「大きなストレス」を感じている。ストレスを溜め込みすぎると、体調を崩したり、うつなどのメンタル疾患に陥ってしまう。そんな中、このコロナ禍に出版した著書『ストレスフリー超大全』では、著者の精神科医・樺沢紫苑氏は、ストレスフリーに生きる方法を「科学的なファクト」と「今すぐできるToDo」で紹介している。「アドバイスを聞いてラクになった!」「今すべきことがわかった!」と、YouTubeでも大反響を集める樺沢氏。そのストレスフリーの本質に迫る。
健康な100歳のために
日本の認知症の年齢別発症率をみると、70~74歳で約5%。80~84歳だと約25%、85歳以上だと55%にも及びます。「人生100歳時代」という言葉が時代のキーワードですが、長生きすればするほど認知症のリスクは飛躍的に高まります。せっかく100歳まで生きられたとしても、認知症になって介護を受けながらでは楽しくないかもしれません。
認知症にならずに生きる。これはすべての人に関係する重要な問題です。
認知症は「予防可能」である
ほとんどの病気は、いきなり病気になるわけではなく、まず「予備軍」として軽い症状を呈します。それを放置することで病気に進行します。
重要なのは、「予備軍」のうちは、生活習慣の改善など簡単な努力で「可逆的」に治ることです。認知症の予備軍を「MCI(軽度認知障害)」といいます。そして、いったん病気になってしまうと、どれだけ頑張っても簡単には治らない「不可逆」な状態となります。
「健康」と「認知症」の間の状態が、MCIです。MCIは、高齢者の4人に1人にも及びます。MCIの状態で踏みとどまれば、「認知症」にならないで済むのです。
「物忘れは、老化だから治らない」と思っている人が多いです。10年くらい前まではそれが常識でしたが、最新の研究では軽度の物忘れ、つまりMCIになっても運動療法などをしっかりと行えば、改善し、普通の状態に戻れることが常識となりつつあります。
そして、仮に認知症になったとしても、進行を遅らせたり、物忘れの症状を改善できるという報告が相次いでいます。
家族に「物忘れ」が見られたら、「物忘れ外来」など、認知症の専門医を受診して、正常なのか、MCIなのか、認知症なのかをきちんと診断してもらうことが重要です。
「最近、物忘れが進んできたけど、たいしたことないから様子を見よう」という判断は避けましょう。徐々に進行して、やがて介護が必要になります。早めに病院に行くようにしましょう。
認知症は「発症の25年前」からはじまっている
最近のアルツハイマー病の研究では、アルツハイマー病は発症の25年前からはじまっていることがわかっています。多くの人は数年前に発病したように考えるかもしれませんが、そうではありません。
脳の中に「アミロイドベータ蛋白」という、神経毒性が高い老廃物が少しずつ溜まり、やがて神経細胞を殺しはじめます。最近では、画像診断で蓄積したアミロイドベータ蛋白を視覚的に検査でき、「アミロイドベータ蛋白」の蓄積が、発病の25年前からはじまっていることがわかっています。
60歳をすぎて「最近、物忘れが進んできた」と慌てても遅いのです。完全に手遅れとは言いませんが、予防は40代より前からスタートすべきなのです。