私たちは、「将来」や「老後」のことを第一に考え、「いま」やりたいことを我慢して必死に仕事を頑張ったり、お金をひたすら節約したりしがちだ。意識が「いま」に向いていないため、日常生活を心から楽しめていない人も少なくないだろう。
そんななか、限られた時間を有効活用し、「いま」を最大限楽しむメソッドを伝授する『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』が好評だ。読者からは、「正しい生き方を教えてくれる本」「本当に大切なものを再認識できた」という声が続々と寄せられている。本稿では、本書の内容をベースに、現役時代に貯めた「老後資金」は実際どのくらい使うのか、その驚きの実態を明かす。(構成/根本隼)

頑張って貯めた老後資金は「実際どれくらい使う?」衝撃の実態Photo:Adobe Stock

「お金の使い切り方」を説く書籍が話題

 現役時代に一生懸命稼いだお金を貯めて、仕事を引退した後などの余生に使う「老後資金」。頑張って貯めたはいいものの、いざ老後を迎えたときに「どのくらい使えばいいんだろう?」と疑問に思っている人は多いだろう。

 そこで参考になるのが、お金の増やし方や貯め方ではなく、人生全体を通じての「資産の使い切り方」に焦点を当てた、異色の自己啓発書『DIE WITH ZERO』だ。

使わなかった老後資金は「タダ働き」したも同然

 本書のメッセージは、タイトル通り「ゼロで死ぬ」、すなわち「死ぬときにちょうどお金を使い切れるように、それまで消費し続けよう」というもの。老後資金の額はそれぞれ異なるが、どんな人にも共通のモットーとして、「徐々に資産を取り崩して、人生の最後に向けて残金をゼロへと近づけていくべきだ」と説いている。

 というのも、現役時代のみならず老後までもお金を節約し続けると、若いときに何万時間も働いて貯めたお金を結局使わないままになる。言ってみれば「タダ働き」していたも同然になってしまうからだ。二度取り戻せない「有限な時間」を無に帰してしまうことほど、もったいないことはない。

 しかし、残念ながら、せっかくの老後資金をほとんど取り崩さないまま亡くなってしまい、「宝の持ち腐れ」に終わるケースは数多い。以下では、本書より一部を抜粋・編集して、「老後のお金の使い方」に関する衝撃の調査結果を紹介する。

「老後資金はどれくらい使う?」衝撃の実態

 アメリカ従業員給付研究所は、2018年、高齢のアメリカ人の資産と支出に関するデータをもとに、退職後の20年間で(または20年未満に死ぬまでに)どれだけ資産が減少したかを調査した。

 人々は老後に資産を使い果たすのだろうか? それとも手をつけないままでいるのか? 主な調査結果の一部を以下に示す。

●概して、人々は自分の資産を使い始める(取り崩す)のが非常に遅い

●60代から90代までの退職者全体で、年齢を問わず世帯支出と世帯収入の中央値比はほぼ1:1だった。つまり、いつまでも収入と同程度の支出を続ける傾向にあり、退職しても資産には手をつけないという傾向を示している

●資産額が多い人々(退職前に50万ドル以上)は、20年後または死亡するまでにその金額の11.8%しか使っておらず、88%以上を残して亡くなっている

全退職者の3分の1が、なんと退職後に資産を増やしている。資産を取り崩すのではなく、反対に富を増やし続けていた
(P.83~84)

生きているうちにお金を使おうとしていない

 つまり、現役時代に「老後のために貯蓄する」と言っていた人も、いざ退職したらその金を十分に使っていない。「ゼロで死ぬ」どころか、そもそも生きているうちにできるだけ金を使おうとすらしていないように見える。

 もちろん、死ぬ前にゼロに到達すべきではない。だが、せっかく貴重な時間と労力を費やして稼いだ金を、生きているうちにできる限り使い切ってほしいと思うのだ。

(P.75、85)

(本稿は、『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』より一部を抜粋・編集して構成しました)