私たちは、「将来」や「老後」のことを第一に考え、「いま」やりたいことを我慢して必死に仕事を頑張ったり、お金をひたすら節約したりしがちだ。意識が「いま」に向いていないため、自分が生きている毎日を心から楽しめていない人も少なくないだろう。
そんななか、限られた時間を有効活用し、「いま」を最大限楽しむメソッドを伝授する『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』が好評だ。読者からは、「正しい生き方を教えてくれる本」「本当に大切なものを再認識できた」という声が続々と寄せられている。本稿では、本書の内容をベースに、同レベルの収入でも「不幸な人」「幸せな人」に分かれてしまう理由を紹介する。(構成/根本隼)

「そこそこ稼いでいるのに不幸な人」と「そこそこでも幸せな人」お金の使い道の決定的な違いPhoto:Adobe Stock

お金の「使い切り方」に着目した本が話題

 私たちはいま、「人生100年時代」とも呼ばれる長寿社会を生きている。内閣府の高齢社会白書(2022年版)によると、日本の平均寿命は2065年には男性84.95歳、女性91.35歳にまで伸びると予想されている(2020年時点では、男性81.56歳、女性87.71歳)。

 寿命が伸びること自体は喜ばしい。しかし、長生きする分だけ、生活費や医療費などさまざまなコストがかかるのも事実だ。「将来に備えてどのくらい貯蓄すればよいのか」と不安に思う人もいるだろう。老後に向けた資産形成のハウツー本が流行るのも頷ける。

 一方で、「どのようにお金を使えばいいのか」という視点で書かれた本は意外に少ない。そんななか、お金を増やしたり貯めたりするメソッドではなく、「使い切り方」を指南する『DIE WITH ZERO』が話題を集めている。

「稼いでいるのに不幸な人」は貯金ばかりしている

 発売から2年で累計13万部を突破した本書は、「限りある人生」を後悔せず楽しく過ごすために、生きているうちにお金を使い切ること、つまり「ゼロで死ぬ」ことを目指すべきだと説く、斬新な1冊。

 先の読めない「将来」のために支出を切り詰めてせっせと貯金するよりも、「いま」だからこそ得られる経験に、若いうちから積極的にお金を使うべきだ、というメッセージが、多忙な現代人の心に響いている。

 以下では、本書より一部を抜粋・編集して、「なぜ若いうちにお金を使うべきか」を具体的に解説する。 

「そこそこの収入でも幸せな人」は“経験”にお金と時間を使う

 赤ん坊、20代、老人という3点を横軸(年齢)として、金で買える人生経験を楽しむ能力を縦軸にグラフで表せば、真ん中が膨れあがったベル型の曲線が描かれることになる。

 つまり、金の価値は年齢とともに変化する。20代も後半に差し掛かると、健康はゆっくりと衰え始める。それに応じて、金から価値を引き出す能力もゆっくりと低下していく。

 そう考えると、どうすれば生きた金の使い方ができるかは自ずと見えてくる。経験を楽しむ能力が年齢によって変わってくるのなら、能力が高いときにたくさんの金を使うことは理にかなっている
(P.165~166)

支出と貯蓄のバランスは年代ごとに調整

 同じ10万ドルを使うにしても、80代より50代のときのほうが価値を引き出せるのなら、80代に使うべき金の一部を50代に回すことが、人生を豊かにするための賢明な判断だと言える。

 また、経験から価値を引き出しやすい年代に多くの金を使おうとするなら、貯蓄に関する計画もそれに合わせて変更していかなければならない。

 原則は1つだ。経験から価値を引き出しやすい年代に、貯蓄をおさえて金を多めに使う。この原則に基づいて、支出と貯蓄のバランスを人生全体の視点で調整していくべきである。
(P.166~167)

(本稿は、『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』より一部を抜粋・編集して構成しました)