北朝鮮スパイ活動の標的は
日米と韓国の引き離し

 北朝鮮は、日米韓の結束を警戒しており、日米と韓国とを引き離すことを画策している。

 日韓の間では、慰安婦問題、徴用工問題などの歴史問題がある。慰安婦の自称「支援団体」である、「日本軍性奴隷制問題解決のための正義記憶連帯(正義連、旧挺対協)」の元理事長で現国会議員の尹美香(ユンミヒャン)氏の元補佐官・チョ・ジョンソク氏が北朝鮮のスパイだとも報じられている。同元補佐官は慰安婦問題と在日朝鮮学校支援運動にかかわってきたが、北朝鮮はチョ氏を通じ、慰安婦問題の状況報告を受け、その解決を妨害してきたのであろう。日韓を離間させることは北朝鮮の政治的な思惑に呼応している。

 尹美香議員自身も北朝鮮との関係から公安当局の監視対象になっており、夫の金三石(キム・サムソク)氏とその妹は、日本で北朝鮮の工作員と接触した容疑で1993年にスパイとして逮捕され、国家保安法違反で有罪が確定した。

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 元徴用工についても訴訟代理人は元慰安婦と同様、民主社会のための弁護士会の所属であり、慰安婦と共通している。元徴用工の支援団体が韓国政府の解決案にかたくなに反対しているのも、日韓の引き離しを画策した動きかもしれない。

 民主労総の政治活動の主たるスローガンは在韓米軍撤退と米韓同盟反対である。北朝鮮スパイは、民主労総やさまざまな市民団体が主催する集会などで、こうしたスローガンを声高に主張することで、米国との関係を妨害している。

 北朝鮮スパイの政治活動は、日米韓の緊密な協力関係構築の障害となっている。尹錫悦政権にとって、こうした北朝鮮の活動を取り締まることが、日米韓関係強化の出発点である。

 韓国で左派思考の人が社会の中枢にいるのは今後10年以内であろう。その間に左派政権が誕生すれば、北朝鮮スパイの活動が再び活発化する可能性がある。尹錫悦政権には革新系の欺瞞(ぎまん)を大いに明らかにしてほしいものである。

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)