Z世代は「タイパ(タイムパフォーマンス)」主義であるという新説がメディアをにぎわせている。だが、若者研究の第一人者である原田曜平氏は、その風潮に異を唱える。原田氏らが実施した調査では、若者は必ずしもスピードや効率性ばかりを重視していないことが分かったからだ。今回は、その実態を前後編でお伝えする。後編となる本記事では、調査で判明した「若者はタイパ主義」という新説が当てはまらない三つのトレンドについて解説する(前編はこちらから)。(ダイヤモンド編集部 濵口翔太郎)
「今どきの若者はタイパ主義である」――。最近、こんな新説がメディアをにぎわせるようになった。
タイパとは「タイムパフォーマンス」の略語であり、「かけた時間に対する成果や満足度」といった意味を持つ。若者の中でも、特にタイパを重視すると報じられているのは、1990年代後半~2010年代に生まれた「Z世代」だ。
こうした「若者のタイパ主義」報道は、「若者は人間関係が希薄化している」といった問題提起とセットでなされることもしばしばだ。
だが、若者研究の第一人者であり、Z世代のトレンドを追い続けてきたマーケティングアナリストの原田曜平氏は、「タイパという概念が若者の間で流行しているように見えますが、私はそうではないと思います」と断言する。
「Z世代に動画を倍速視聴する人が多いのは、単にTikTokなどの短尺動画に慣れているからではないでしょうか。長尺の動画に不慣れなだけなのに、タイパ主義だとひとくくりに分析されている印象です」(原田氏、以下同)
そこで、若者コミュニティーの「本当のトレンド」を探るべく、原田氏は22年におけるZ世代の消費行動を調査した。その結果、Z世代は必ずしもスピードや効率性ばかりを重視しているのではなく、大人からは非合理的に見えることを楽しむ価値観も持っていることが分かった。
さらに、新型コロナウイルス感染拡大によって薄れた友人関係を「築き直したい」というニーズを持っていることも判明した。
「マイルドヤンキー」「さとり世代」「伊達マスク」など、世相を切り取る言葉を生み出してきた原田氏は、この調査で見つけたZ世代のトレンドにさまざまな名前を付けている。
今回はその中から、「若者はタイパ主義」だという新説が当てはまらない三つのトレンド、「背徳友情」「呼び出しおしゃれ」「お酒(しゃ)れブランド」を紹介しよう。