「Z世代の一昔は5~6年前」のニュースに疑問、時間感覚はそう単純じゃない写真はイメージです Photo:PIXTA

人生の中で、「10年ごと」をそれなりの区切りと考えている人は多いだろう。10年ごとに自分が何十代かが変わるわけだし、「十年一昔」という四字熟語に親しんだ世代であればなおさらだ。とはいえ、情報の量が昔と比べて爆発的に増えた現代では、時間感覚も昔とは違うのではないか……とも思われる。(フリーライター 鎌田和歌)

Z世代は時間感覚のスピードが速い?
本当なのか

「Z世代、一昔は5〜6年前 働く若者の時間感覚調査」

 数日前、こんなタイトルの記事が配信され、ネット上に流れた。ある時計メーカーが18〜26歳の男女各200人を対象にした時間感覚に関する調査だった(※シチズン時計株式会社によるインターネット調査「働くZ世代の“時感”意識 時に関する日常語。Z世代はどんな感覚?」)。

 このような調査はメーカーの話題作りのために行われることが多く、ビジネスパーソンたちの興味を引くキーワードと絡めて調査が行われる。今回の場合は、何かにつけてホットトピックとなる「Z世代」だろう。いつの時代も、世の中は若者の動向を気にしてあれこれ言いたくなるものだ。

 この調査結果を元に、冒頭に引用したタイトルが付けられているのだが、本記事の趣旨は、「Z世代は時間感覚のスピードが速い」ということを言いたいのではない。むしろ、Z世代は時間感覚のスピードが速いというのは本当なのか?ということを問いたい。

 調査は男女合わせて400人と限定的であるし、他の世代・時代との比較があるわけではない。調査した側も本気でZ世代の特徴や傾向をつかみたいという意図があるわけではなく、ビジネスパーソン同士での話題のきっかけを提供したい……というものと推察する。

 調査結果を詳しく見てみると、ニュースの見出しがややミスリードであることもわかる。

「『十年一昔』とは、“世の中の移り変わりが激しく、十年もたつと昔のこととなってしまう”という意味の四字熟語ですが、ご自身の感覚では、何年くらい前を『昔』だと感じますか?」という質問の回答結果を見てみよう。もっとも多いのは、「10年」(34.0%)で、「5年」は29.8%であった。もっとも、全体の平均値が6.5年であったことから、「Z世代は5〜6年が一昔」と結論づけたようだ。

 しかし、「十年一昔」の熟語の意味を伝えてから質問をしているので、回答者はどうしてもこれに引きずられる人が多いはずだ。それでも「5年」と答えた若者が「10年」についで多かったというのは、確かに特筆すべきことなのかもしれない。

 筆者が気になったのは男女の回答の差で、「十年一昔」を「5年」と答えた男性は25.5%だったのに対して、女性は34.0%だった。また「10年」と答えた男性は37.0%、女性は31.0%だった。前述した通り、傾向がつかめるほどの調査人数ではないものの、女性の方がより「一昔」を短く感じている結果は興味深い。