とてつもなく頭のいい人がやっている「最高の読書法」

ラテン語こそ世界最高の教養である――。歴史、哲学、宗教のルーツがわかると大きな話題になっている『教養としての「ラテン語の授業」――古代ローマに学ぶリベラルアーツの源流』著者は、超難関試験を突破し、東アジアで初めてロタ・ロマーナ(バチカン裁判所)の弁護士になったハン・ドンイル氏。彼に貴重な特別インタビューを行った。現代社会では使われなくなったラテン語に、なぜ人々は熱中するのか。その知られざる魅力とは?(取材・構成/岡崎暢子)

ラテン語を学ぶと頭がよくなる? 意外な効用とは?

――『教養としてのラテン語の授業』の中では、言語が思考に影響を与えるという旨が記されていましたね。

ハン・ドンイルさん(以下、ハン) ラテン語の特徴についてひとつ述べるならば、水平型の言語であるということです。古代ローマは多くの属州を従えていましたが、支配されている国の人々は自分たちが植民地支配されているとは考えず、共通の祖国だと思っていたといいます。それはひとえにラテン語が思考に与えた影響によるものだと私は考えます。本書で例を挙げて述べましたが、ラテン語は上下関係の言語ではなく、水平関係のフラットな言語なのです。

 韓国語や日本語は上下関係が明確な垂直な言語であるため、常に上下関係を意識せざるを得ません。当然そこには一長一短がありますが、言葉というのは人間の思考に多大なる影響を与えるものです。ラテン語を研究している身からすれば、韓国語も水平型に発達すれば、発言しやすくなって風通しもよくなるだろうにと思うことがあります。少し話はそれますが、だからこそ私は、未来の若い世代には、水平関係の言語での思考やコミュニケーションを身につけてほしいと考えています。

 もちろん、自分の考えを発言するためには、自分の言葉が形成されなければなりません。これについて、外国語学習を続けていて気がついたことがあります。外国語を学ぶ人たちの中には、語彙や文法が習得できていないからうまく発言できないと考える人も多いですね。それは一理ありますが、語彙や文法の不足よりも、自分の思考の不足ゆえに発言できないのです。

自分の思考を育て、鍛える最高のトレーニングとは?

――なるほど。確かにおしゃべりな人の方が外国語でも臆さず発言している印象です。であれば、自分の思考を満たすトレーニング方法はありますか?

ハン 自分の思考をどう育て、鍛えていくのか……。それには読書が手軽でよい手段です。また、ただ何となく読むよりも、より能動的に本を読む方法があります。本の内容を15分間で他人に説明するつもりで読書をするんです。これは私が中学生の頃に始めたのですが、最初は下校しながら15分間で何かを説明しようと考えていました。

 例えば「自由とは何か」を説明しようと試みる。中学生ですから2~3行の説明を思いついたら終わり、とても15分間もしゃべれません。そこで残りの時間を埋めるために本を読み始めたのです。「自由」を説明するのに最適な内容を本の中に探しながら読む。これがやがて読書の時の習慣になりました。

――15分間も話し続けるのは、なかなか難しそうです。では、どんな本を読めばいいのでしょうか?

ハン ジャンルに関しては、手当たり次第に読んでも構わないのです。意識を持って読書をすれば、やがて水が沸騰するように湧き上がる瞬間が訪れます。

 私の場合、子どもの頃は貧しかったので、ちんぷんかんぷんでも身近なところにあった本を読み、20代の頃はベストセラーを読むこともありました。30代以降は学問に関する本しか読まなくなりましたが……。

 私なりのポリシーをあえて紹介するなら、外国語を勉強し始めてからは、原著を読むようにしています。翻訳本を読んでいて納得しずらかった部分も、原著を参照してスッと腑に落ちた経験が多々ありますので。私自身も原文を翻訳する機会が少なくありませんが、相手に説明できるくらいに噛み砕いた上で、自分の言葉で紹介するように心がけています。

【大好評連載】
第1回 「お金があっても満たされない人」を救う3つの言葉

ハン・ドンイル
韓国人初、東アジア初のロタ・ロマーナ(バチカン裁判所)の弁護士。ロタ・ロマーナが設立されて以来、700年の歴史上、930番目に宣誓した弁護人。

2001年にローマに留学し、法王庁立ラテラノ大学で2003年に教会法学修士号を最優秀で修了、2004年には同大学院で教会法学博士号を最優秀で取得。韓国とローマを行き来しながらイタリア法務法人で働き、その傍ら、西江大学でラテン語の講義を担当した。彼のラテン語講義は、他校の生徒や教授、一般人まで聴講に訪れるようになり、最高の名講義と評価された。その講義をまとめた本書は韓国で35万部以上売れ、ベストセラーとなった。
ラテン語を母語とする言語を使用している国々の歴史、文化、法律などに焦点を当て、「ラテン語の向こう側に見える世界」の面白さを幅広くとり上げている。ロタ・ロマーナの弁護士になるためには、ヨーロッパの歴史と同じくらい長い歴史を持つ教会法を深く理解するだけでなく、ヨーロッパ人でも習得が難しいラテン語はもちろん、その他ヨーロッパ言語もマスターしなければならない。加えて、ラテン語で進められる司法研修院3年課程も修了しなければならない。これらの課程をすべて終えたとしても、ロタ・ロマーナの弁護士試験の合格率は5~6%にすぎない。現在は翻訳や執筆を続けている。
著書に『法で読むヨーロッパ史』『カルペラテン語総合編(語学教材)』『カルペラテン語韓国語辞典』『ローマ法事典』『信じる人間に対して:ラテン語の授業2番目の時間』があり、『東方カトリック教会』『教父たちの聖書注解ローマ書』『教会法律用語辞典』などを韓国語に訳した。

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