職場で困っている人を見かけても、「おせっかいだったらどうしよう…」と躊躇したり、「たぶん大丈夫だろう…!」と自分に言い訳したり……。
気づかいをするときには、つい「心の壁」が現れてしまい、なかなか一歩が踏み出せないことが、あなたにもあるのではないでしょうか?
この連載では、「顧客ロイヤルティ(お客さまとの信頼関係づくり)」をベースに、ビジネスセミナーへの登壇やコミュニケーションスキルの研修講師を通して、全国200社・2万人以上のビジネスパーソンに向けて教えてきた『気づかいの壁』の著者、川原礼子さんが、「気がつくだけの人」で終わらず、「気がきく人」に変われる、とっておきのコツをご紹介します。
チャットツールは「ルールなき世界」
ここ数年で、私たちのコミュニケーションツールにチャットが加わりました。
通信手段の多様化にともない、何をどの目的でどのように使用したらいいのか迷う人が多いようです。
メールであれば、あいさつの仕方などに一定のマナーがありますし、前文・本文・末文という基本構文も存在します。
一方で、歴史の浅いチャットツールは、企業によって使い方やルールがさまざまです。
「チャットで資料を送ったけれど、グッドボタンのリアクションだけなんて失礼だ」と感じる人もいます。
「チャットなのに、『お気づきの点がありましたら遠慮なく……』と、長々と書いてくるなんておかしい」と感じる人もいます。
人それぞれだから迷うのも仕方ありませんよね。
メールよりもフランクにしてみる
チャットはテンポを重視して「短く」を基本にしましょう。
迅速にやりとりすることに特化したツールですから、メールのようなあいさつや、過度なクッション言葉はいりません。
グループチャットなどで「読んだこと」だけを伝えたいのであれば、リアクションボタンを選択したほうが合理的です。
全員が、「ありがとうございます」「かしこまりました」とメッセージすると、元のメッセージの内容が上に移動して確認しにくくなります。
メールの文章よりフランクなくらいでちょうどいいと思います。
ただ、相手の世代や目的によっては、メッセージで返すのが望ましいときがあります。
たとえば、「ぜひ、○○さんの資料を参考にしたいです」とお願いしてきた後輩がいるとします。
その後輩に、あなたが過去に苦労して作った資料をチャットで送ったとします。
そこに返ってきたのが、「グッドボタンのリアクション」だけだったら、ちょっと違和感を抱かないでしょうか。
これを見極めるには、「相手の労力の有無」を考えることです。
相手が時間をかけて考えたり、作ったりしたものに対しては、丁寧に返事するようにしましょう。
また、長文でじっくり返さないといけない必要に駆られたときは、チャット上で、
「長くなりそうなので、あとでメールのほうに送っておきますね」
などと伝えて、ツールを替えるようにするといいでしょう。
とはいえ、人の感覚もツールも進化しているので、数年後は私も違うことを言っているかもしれません。ただ、迷ったときは「自分がされて嬉しいかどうか」が最強の軸になることは未来永劫、変わらないはずです。
川原礼子(かわはら・れいこ)
株式会社シーストーリーズ 代表取締役。
元・株式会社リクルートCS推進室教育チームリーダー。
高校卒業後、カリフォルニア州College of Marinに留学。その後、米国で永住権を取得し、カリフォルニア州バークレー・コンコードで寿司店の女将を8年経験。
2005年、株式会社リクルート入社。CS推進室でクレーム対応を中心に電話・メール対応、責任者対応を経験後、教育チームリーダーを歴任。年間100回を超える社員研修および取引先向けの研修・セミナー登壇を経験後独立。株式会社シーストーリーズ(C-Stories)を設立し、クチコミとご紹介だけで情報サービス会社・旅行会社などと年間契約を結ぶほか、食品会社・教育サービス会社・IT企業・旅館など、多業種にわたるリピーター企業を中心に“関係性構築”を目的とした顧客コミュニケーション指導およびリーダー・社内トレーナーの育成に従事。コンサルタント・講師として活動中。『気づかいの壁』(ダイヤモンド社)が初の著書となる。