日本のレーダー照射報道を受け、中国の世論は戦争でもしないと収まらないという雰囲気が濃厚になっている。厳しい環境汚染にあえぐ中国市民は日本の技術を必要としているのに、中日関係もまた深い濃霧で前方が見えない。(在北京ジャーナリスト 陳言)

 領土問題、しかも軍事衝突の可能性がどんどん高まってくる問題となると、世論は熱狂する。次々と新しいニュースが報じられ、未知の情報が紙面やインターネットから溢れ出てきて、その刺激を受けて「愛国」の情が高ぶる。釣魚島(尖閣諸島)問題は、閉塞している中日両国の市民に、そのような刺激を120%も与えている。新しい「事実」、「史実」、「実況」が入ってきて、戦争でもしないと、なかなか収まらないという雰囲気は濃厚になってくる。

 ひどく汚染された空気は、北京、上海などの大都会だけでなく、ほぼ中国の沿海地域全体を覆っている。かつて大気汚染を経験した日本は、今こそ中国に進出して環境改善に力を貸し、またビジネスとして育てていくべきであるが、領土問題の影響で互いに見向きもしない。現在、日本経済は自律的な回復を目指している模様で、中国の存在抜きでも回復が可能であると思われている。しかし、中国市場に順調な進出できれば、その回復は一層速められていくだろう。しかし、領土問題が大きな障壁となり、中日とも相手が見えにくくなっている。

 そんな中で2月6日に報じられた「レーダー照射事件」は、2012年4月16日の石原慎太郎東京都知事(当時)の島購入発言によって始まった中日の挑発と応戦を、最高段階まで引き上げている。中日双方ともまったく冷静を失っている。

一般市民の理解範囲内を超えた
レーダー照射の意味

 レーダー照射の過程については、本サイトではすでに姫田小夏氏が、2月8日のコラムに詳細に書いていたので、ここでは詳しくは述べない。

 たまたま春節の前だったので、中国の一般市民は、そのニュースについてはさほど関心を持っていなかった。また9日からの10日間は、ほぼすべての新聞雑誌が休刊しているので、インターネットでは関連の情報があったものの、一般大衆紙ではそれほど詳細に報道されていない。