2月5日、日本のトップニュースに再び尖閣諸島が躍り出た。「中国艦が海自艦に射撃前レーダー照射」――。ひとつ間違えれば戦闘状態に突入だ。一触即発のセンセーショナルな事態に、日本列島が震撼した。

 事態は1月30日、沖縄・尖閣諸島から100km超の公海上で起きた。海上自衛隊の護衛艦「ゆうだち」に向けて、中国海軍の艦船が火器管制レーダーを照射したのだ。レーダー照射は「攻撃の意図がある」と取られかねない行為だが、その照射は数分間続いたという。

 この時期になぜ。疑問は深まるばかりだ。なぜなら、連立与党である公明党の山口那津男代表が北京を訪問し、1月25日に習近平共産党総書記に宛てた安倍首相の親書を手渡したばかり。それから1週間も経たないうちに、この「レーダー照射事件」が起きたからだ。

日米同盟強化に
不快感を示す中国

「この時期になぜ」を推測すると、1つに「日米同盟の強化」がある。

 今年1月19日、米クリントン国務長官は、訪米中の岸田文雄外相と会談を持った。会談後、ヒラリー国務長官は尖閣諸島問題に触れ、「日本の管轄権を脅かす一方的な行為に反対する」と中国を牽制した。それが中国の反発を買った、というのだ。

 日中問題に詳しい亜細亜大学国際経営戦略研究科の範雲涛教授は、「日米が結託して中国を牽制しようという動きに、中国は苛立ちを感じている」と話す。

 中国は、経済大国2位の中国と、3位の日本のこの領土争いを“兄弟げんか”に見立てている。3位の日本が1位のアメリカに泣きつく様を、「親(アメリカ)に告げ口するズルい弟(日本)」と受け取られている、というのだ。

 また、復旦大学日本研究センターの胡令遠副主任は、地元紙に向け「安倍首相は訪米を予定しているが、日米同盟強化のため、日本は中国の脅威を煽り続ける必要に迫られている」とコメントしている。このことからも「日米同盟の強化」に中国側が相当の不快感を示していることが伝わってくる。