50、60と年を重ねるにつれ、誰しも認知症への不安が頭をよぎるもの。認知症を過剰に恐れる必要はないものの、医療と適切につき合い、前もって準備しておくことが重要となる。数々の患者と向き合ってきた高齢者専門精神科医・和田秀樹氏の金言をヒントに、自分や家族の前向きな老いについて考えていく。本稿は、『80歳の超え方』(廣済堂出版)の一部を抜粋・編集したものです。
認知症はひとつではない
必ず「専門医」に診断を
認知症といっても、認知症にはいろいろな種類があります。
ちなみに認知症は、病気の呼び名ではありません。認知症という状態を表す言葉です。認知症の状態になった原因疾患があるのです。
物忘れが始まると「認知症ではないか」と心配する人、「認知症にならないでよ」と注意する家族がいます。心配しても注意してもなるものはなるのですから、不安がある場合は専門医に診てもらってください。
最近は、内科クリニックでも簡単に認知症の薬を出したりしますが、認知症の薬は認知症を治すためのものではありません。
一般的には「進行を遅らせる」ですが、これも効果のある人とない人がいます。早期に服用したほうが効果が出るともいわれますが、効果がないときは漫然と服用しないほうがいいかもしれません。
「副作用はあまりありません」と説明を受けたという人もいますが、薬というのは副作用があるものです。その影響は人によってだいぶ違います。
認知症の症状の裏には
別の疾患が隠れている場合も
一般的には、内科で出された認知症の薬を飲み続けるより、専門医に画像診断や認知症テストを受けて、きちんと診断されてから対策を考えるほうが望ましいのですが、地域医療を行う内科医のほうが認知症の対応に慣れている人もいますし、精神科医でも高齢者のことはよくわからない人がいるので、まずケアマネジャーや地域包括支援センターで医者の評判を聞いて受診するのが賢明です。
認知症の代表的なものとしては「アルツハイマー型」、「脳血管性」、「レビー小体型」などが挙げられますが、いずれも治療薬はありません。進行性で対応に大きな差はないので、あまり原因疾患にこだわる必要はないと私は考えていますが、認知症の原因疾患を知ったほうがいい理由は、認知症の状態があっても治療できる疾患が原因の場合もあるからです。