「1日3食では、どうしても糖質オーバーになる」「やせるためには糖質制限が必要」…。しかし、本当にそうなのか? 自己流の糖質制限でかえって健康を害する人が増えている。若くて健康体の人であれば、糖質を気にしすぎる必要はない。むしろ健康のためには適度な脂肪が必要であるなど、健康の新常識を提案する『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』(萩原圭祐著、ダイヤモンド社)。同書から一部抜粋・加筆してお届けする本連載では、病気にならない、老けない、寿命を延ばす食事や生活習慣などについて、「ケトン食療法」の名医がわかりやすく解説する。
人間は、成長のエネルギーを脂肪として溜めている
赤ちゃんは、脂肪の塊みたいなものです。これはまさに成長のためなのです。背が伸びる前にちょっと横に太って、それからシュッと伸びて、また横に太ってということを、赤ちゃんは繰り返します。
つまりは大きく成長するにあたり、脂肪の形で、人はエネルギーをストックしているのです。必要なときに脂肪がないと、十分な成長を果たすことができなくなります。
このことが大きな問題になっているのは、なんといっても10代の女の子でしょう。思春期は、脂肪を蓄えたほうがいい時期なのですが、ひたすら食事量を減らしてモデル体型を目指したりします。
脂肪細胞からは「レプチン」というホルモンが分泌されます。レプチンは、摂食中枢に働きかけて食欲を抑える作用があるのですが、その他にも大切な作用があります。
レプチンは卵巣を刺激し、女性ホルモンであるエストロゲンの分泌を促進します。
エストロゲンは脂肪の蓄積を進めますが、ある程度脂肪が蓄積されると、レプチンの影響で自然に食欲が抑えられ、ちょうどいい体脂肪のバランスになるのです。
皮下脂肪が少なくなるとレプチンの刺激が減り、
月経不順や月経痛などの問題が起こる
逆に、極端なダイエットで、皮下脂肪が少なくなると、レプチンの刺激が減って、エストロゲンが分泌されず、月経不順や月経痛など、いろいろな問題が起こってきます。ファッションモデル界が、過度なダイエットに規制をかけたのは記憶に新しいところです。健康的な脂肪のバランスの大切さについて、できるだけ早い段階で学ぶことが大切だと思います。
確かに中年になれば、いわゆる「メタボ」という形で、脂肪を気にしなければならない人の割合も増えてきます。
しかし、その基準は、もっとゆるやかに考えてもいいのかもしれません。
ただし、誤解のないようにしていただきたいのは、「太ったっていいじゃないか」ということではありません。脂肪を落とすことのデメリットも、理解する必要があるということです。
大阪大学大学院医学系研究科 先進融合医学共同研究講座 特任教授(常勤)、医学博士
1994年広島大学医学部医学科卒業、2004年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。1994年大阪大学医学部附属病院第三内科・関連病院で内科全般を研修。2000年大学院入学後より抗IL-6レセプター抗体の臨床開発および薬効の基礎解析を行う。2006年大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫アレルギー内科助教、2011年漢方医学寄附講座准教授を経て2017年から現職。2022年京都大学教育学部特任教授兼任。現在は、先進医学と伝統医学を基にした新たな融合医学による少子超高齢社会の問題解決を目指している。
2013年より日本の基幹病院で初となる「がんケトン食療法」の臨床研究を進め、その成果を2020年に報告し国内外で反響。その方法が「癌における食事療法の開発」としてアメリカ・シンガポール・日本で特許取得。関連特許取得1件、関連特許出願6件。
日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)などの学会でがんケトン食療法の発表多数。日本内科学会総合内科専門医、内科指導医。日本リウマチ学会リウマチ指導医、日本東洋医学会漢方指導医。最新刊『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』がダイヤモンド社より2023年3月1日に発売になる。