「1日3食では、どうしても糖質オーバーになる」「やせるためには糖質制限が必要」…。しかし、本当にそうなのか? 自己流の糖質制限でかえって健康を害する人が増えている。若くて健康体の人であれば、糖質を気にしすぎる必要はない。むしろ健康のためには適度な脂肪が必要であるなど、健康の新常識を提案する『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』(萩原圭祐著、ダイヤモンド社)。同書から一部抜粋・加筆してお届けする本連載では、病気にならない、老けない、寿命を延ばす食事や生活習慣などについて、「ケトン食療法」の名医がわかりやすく解説する。

【名医が教える】ケトン体の働きが老化防止につながる理由Photo: Adobe Stock

ケトン体は、全身の炎症を抑える効果がある

 ケトン体には、直接的な抗炎症効果があります。免疫細胞であるマクロファージからの炎症性サイトカインの産生を抑制します。

 血中CRP(血液中に含まれる「C反応性たんぱく」の含有量を測定する)検査が正常値であれば、ケトン体が正常に作用していて、全身の炎症が抑えられていることを意味します(老化の原因の一つは体内の炎症)。

 体格がやせていようが太っていようが、脂肪細胞から良質な脂肪酸が放出され、肝臓に取り込まれてケトン体がつくられていれば、軽度の炎症であれば、全身の炎症を抑えるのです。

 血中CRPの上限値は0.2mg/dl(ミリグラムパーデシリットル)とされ、健康な人であれば、一般に、0.2mg/dlを超えることはありません。いわゆる、軽い感染症なら1~2mg/dl程度、肺炎などでは、10mg/dlを超えたりします。

 しかし、いままで健診で、0.04mg/dl未満だったのが0.1mg/dlくらいになり、徐々に正常上限0・2mg/dlに近づいてきている。よく見たら血糖値もずっと80mg/dl台後半だったのが、だんだん90台mg/dl前半くらいになっている。

 これがいよいよ90mg/dl台後半から100mg/dlを超えるくらいになれば、全身の炎症を抑える方法を考えないといけない、ということになります。

メタボリックシンドロームは、発がんには関係しない

 実際のところ、約2万8000人の男女を10年間追跡調査した結果では、メタボリックシンドロームは、発がんにはかかわらないことが報告されています。

 極端に体重が増加しなければ、「炎症」の弊害が出てこない限りは、みなさんが気にする体脂肪率や、お腹周りの数値は、もう少しゆるやかに考えていいようです。

萩原圭祐(はぎはら・けいすけ)
大阪大学大学院医学系研究科 先進融合医学共同研究講座 特任教授(常勤)、医学博士
1994年広島大学医学部医学科卒業、2004年大阪大学大学院医学系研究科博士課程修了。1994年大阪大学医学部附属病院第三内科・関連病院で内科全般を研修。2000年大学院入学後より抗IL-6レセプター抗体の臨床開発および薬効の基礎解析を行う。2006年大阪大学大学院医学系研究科呼吸器・免疫アレルギー内科助教、2011年漢方医学寄附講座准教授を経て2017年から現職。2022年京都大学教育学部特任教授兼任。現在は、先進医学と伝統医学を基にした新たな融合医学による少子超高齢社会の問題解決を目指している。
2013年より日本の基幹病院で初となる「がんケトン食療法」の臨床研究を進め、その成果を2020年に報告し国内外で反響。その方法が「癌における食事療法の開発」としてアメリカ・シンガポール・日本で特許取得。関連特許取得1件、関連特許出願6件。
日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会、日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)などの学会でがんケトン食療法の発表多数。日本内科学会総合内科専門医、内科指導医。日本リウマチ学会リウマチ指導医、日本東洋医学会漢方指導医。最新刊『ケトン食の名医が教える 糖質制限はやらなくていい』がダイヤモンド社より2023年3月1日に発売になる。