誰でも「頭がいい人」のように思考するためのツール「フレームワーク」。だが世の中には、いろいろなフレームワークが溢れていて、「いざ使ってみよう!」というときにどれを使えばいいのかわからない…。こんな悩みをかかえている人も多いだろう。それを解決してくれるのが、『グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50』だ。厳選されたフレームワークだけを紹介し、使い方のコツをシンプルにまとめた非常に便利な1冊だ。本連載では、本書の内容から、「誰でも実践できる考えるワザ」をお伝えしていく。

グロービスMBAキーワード 図解 基本フレームワーク50Photo: Adobe Stock

“MECE”に考えるとは?

 分析の基本は物事を「分解」することです。そして分解とは分析対象を、それを構成する個々の要素に分けることです。

 たとえば、「全部門の売上げ」という分析対象は、「製品Aの売上げ」、「製品Bの売上げ」、「製品Cの売上げ」……に分けることもできますし、「法人向けの売上げ」、「消費者向けの売上げ」のように分けることもできます。

 適切に分解を行うと、現状を漠然とではなく、どこがどのようになっているのかを把握しやすくなります。

 そして、分析目的に照らし、その意味合いを掴んで行くのです。

 分解はいわば、現状を吟味する際の最重要なアプローチと言えるでしょう。

 効果的に分解を行う際に重要なのが、「MECE=モレなくダブりなく」という考え方です。

 MECEの概念は非常にシンプルで、これを適切に用いることができれば分解の精度が上がり、ひいては問題解決や対策立案の効果も上がります。

 ちなみに、厳密にはMECEとは言えなくとも、MECEにかなり近いフレームワークが世間にはたくさんあります。

 たとえばマーケティング・ミックスの4Pは、顧客への具体的なアプローチを「製品」「価格」「チャネル」「コミュニケーション」の4つに分けたものです。

 他の要素もなくはないかもしれませんが、この4つのポイントを考えれば、概ね顧客へのアプローチは含まれており、その意味で非常に優れた、MECEに近いフレームワークと言えるでしょう。

 MECEは既存の多くの有名フレームワークのベースとなっているだけではなく、独自のフレームワークを考案する際にも使える、非常に応用性の高い考え方と言えます。

 なお、「モレなく」「ダブりなく」の2つは併記されているため、同等の重要性があるように考えてしまいがちですが、実務上は「モレなく」の方が重要です。

 なぜなら、ダブりに関しては後でいくらでも調整できますし、よほど大きなダブりでない限り多少効率性が悪くなる程度ですが、モレはいったん見落としてしまうと、永遠にそのモレに気がつかないことが多いからです。

事例で確認

 実際にMECEに分解した例を見てみましょう。図表1-2の左は日本の消費者をMECEに分類したものです。

 目的としては、たとえばある企業が新製品の企画を行う際それぞれのセルに人口が何人いて、それがどのくらいターゲットとなりそうかを考える、といったシーンを想像してください。

 一昔前であれば、この図表1-2左の分類は十分に有効なMECEの切り口であったでしょう。

 しかし、最近は性的マイノリティと言われるLGBTQの人口が増えているため(一説には日本人の人口の7、8%程度と言われています)、左側の図ではなく、右側にしないと正しい人口動態の把握はできなくなりつつあります。

 MECEは一度考えたらずっと不変ということはなく、どんどん進化していくという点は忘れないようにしてください。

 また、当然ながら、目的が異なれば切り口もその目的に適うよう最適なものを選ぶ必要があるのは言うまでもありません。

「MECE」を用いる場面
・全体の構造を大枠で把握する
・ロジックツリーやマトリクスのフレームワークに応用して問題の原因追求や課題解決を行う
・新しいフレームワークを考案して分析等に活かす
・あらゆる相手を対象に施策を講じる(例:全社員向けの福利厚生施策の立案など)
「MECE」を使うコツ・留意点
1.
 モレをなくす手っ取り早い方法は「その他」という項目を設けることです。この項目があれば、理論上モレは発生しません。

 ただし、全体の30%も占めるような項目を「その他」とひとくくりにするのはやや乱暴で、分析の精度を落とします。また、全体から見て数の上ではマイノリティだとしても、大きな影響を与えうるものを「その他」にまとめて括ってしまうのも好ましくありません。
 たとえばコンピュータの分類をするときにスーパーコンピュータを「その他」に扱うと技術開発の最先端の状況が見えなくなってしまうかもしれません。

2.
 
一般に、全体集合が明確な場合(例:人類、自社の従業員など)はMECEへの分解は比較的容易ですが、「施策」や「可能性」をMECEにブレークダウンすることは容易ではありません。
 1994年に誕生した村山富市内閣は、自由民主党と当時の社会党が連立を組んだことで世間を驚かせましたが、もし当時の自民党が「保守政党との連立」や「中道政党との連立」という可能性しか視野に入れていなかったら、自民党の与党返り咲きはなかったかもしれません。
 モレなく「革新政党との連立」の可能性も見落とさなかったことが鍵だったのです。