英国のリシ・スナク首相Photo:Leon Neal/gettyimages

――筆者のウォルター・ラッセル・ミードは「グローバルビュー」欄担当コラムニスト

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 欧州における戦争、中東危機、東アジアでの緊張の高まり、そして窮地に陥った西側諸国とグローバルサウス(主に南半球の途上諸国)の間での亀裂の拡大。このような時に「グローバルビュー」のコラムを書くことが必ずしも最も楽しい仕事とは限らない。しかし、ここ数カ月間に静かに進展している朗報が少なくとも一つある。グローバル・ブリテンが現実のものとなりつつあり、そのおかげで世界はより良い状態になっている。

 英国が2016年の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を決めて以降、世界は変わった。ブレグジットの後、その熱心な支持者たちは、英国は積極的な規制緩和を進め、「テムズ川沿いのシンガポール」になると予想していた。ロシアの新興財閥(オリガルヒ)、中国の大物、アラブの石油王たちが、EUや米国よりも規制が少なく、居心地の良い、洗練された金融市場の恩恵を享受しようと躍起になってロンドンに押し寄せる。とりわけ米国との間で、そして急速に成長するアジア諸国との間でも自由貿易協定が実現すれば、英国のEUにおける特権的地位の喪失を補って余りある成果がもたらされることになる。ブレグジット後の英国について、支持者の間ではそのように考えられていた。