反日スローガンでは
世論を動かせない

 尹錫悦政権は今回の解決案は国益にかなったものであるとして、外交、経済、青年の未来について次々に新たな政策を明らかにしている。

 外交では、尹錫悦大統領の日本訪問と日韓の首脳シャトル外交の復活。バイデン大統領の国賓招待を受けての米国訪問。安保では日米韓の連携強化。日米韓「核の傘協議体の新設」。GSOMIAの完全復活。経済では日韓経済関係の修復。日本の対韓半導体素材の輸出規制緩和。貿易、投資、科学技術分野の連携強化。そのほか、未来世代に向けた「未来世代育成基金」などである。

 尹錫悦大統領が、今回の解決案は日韓の共同利益、韓国の国益だとして行動を早めているのに対し、民主党や市民団体の正義連などは、相変わらず反日の一点張りであり、メディアに取り上げられる機会も減ってきている。

 反日のスローガンだけでは世論を動かせなくなっている証拠ではないか。

西側諸国がこぞって
徴用工解決案支持を表明

 徴用工解決案をいち早く支持したのが米国である。バイデン大統領は7日、尹錫悦大統領を来月26日に国賓として招待すると発表した。バイデン政権になってからの国賓は、マクロン大統領に次いで2人目であり、これは米国が解決案を高く評価している証左である。

 米国の政界から肯定的な評価が相次ぐ中、ワシントン・ポストは「尹大統領は韓国政治の勇気ある人物と位置付けられるだろう」との寄稿文を載せた。

 国連のグテーレス事務総長は「韓日間の肯定的な交流と未来志向的な対話を歓迎する」と述べた。

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 西側諸国は、解決案を「平和安定に寄与する」と一斉に歓迎した。カナダ、ドイツ、英国、オーストラリアの外相らである。欧州諸国が一斉に日韓問題について声を上げるのは珍しいが、それは中国の脅威が高まる中、日韓との協力関係を重視するためである。

 これだけ世界に評価されていることは韓国にとって誇らしいことであろう。特にバイデン大統領が、日本よりも先に、尹錫悦大統領を国賓として招いたことは自尊心をくすぐることになろう。

 尹錫悦大統領が最後まで徴用工問題の解決にこの案で取り組めるのか、日本国内に疑問視する声もないわけではないが、これだけ世界から称賛されると引き下がりにくくなるだろう。

 徴用工問題は解決に向けて動き出した。

(元駐韓国特命全権大使 武藤正敏)