飲酒は? 喫煙は? 肥満は? ストレスは?
本当に脳に悪いこと、いいことは何だろう?

脳の若返りと認知症治療の専門医・白澤卓二医師は『長寿脳──120歳まで健康に生きる方法』で、現代人の願いである健康長寿を脳から実現するノウハウを提案する。認知症にならずに体も長持ちさせるためには、40代からの脳のケアが大切だと著者はいう。本書では世界最新の医学で明らかになった認知症予防・改善策と、その研究からわかった脳のパフォーマンスを上げるために必要な生活習慣とは?

タバコを吸い続けても長生きしている人がいる理由Photo: Adobe StocK

タバコは誰にとっても有害か

 お酒に続いてよく話題に上るのが、タバコの功罪です。疲れたときに一服したくなるという声も聞かれます。しかしタバコについてはお酒以上に悪者扱いですが、実際のところはどうなのでしょうか。

 昭和の時代とくらべると、喫煙者は格段に減ってきています。古い映画を観ると、男性も女性もところかまわずタバコを吸っていますし、昔は電車の座席近くに灰皿があるのは、普通のことでした。飛行機の中でも、後部座席には喫煙席がありました。

 喫煙者が減ったのは、喫煙によって引き起こされる健康被害への問題意識が、世界的に広がってきたからでしょう。

「タバコを吸うと肺がんになる」というもっともらしいフレーズが禁煙傾向に拍車をかけたことは間違いありませんが、このほかにもタバコに含まれる有害物質が逐一取り沙汰されて、副流煙も大きな問題となりました。タバコは百害あって一利なしというのが現代の常識です。

長生きしている喫煙者の存在

 では、タバコを吸うと本当に短命になるのでしょうか?

 もちろん肺がんが誘発される可能性はあるでしょう。でも、長生きしている人のなかには、タバコを吸い続けている人もけっこういます。タバコを吸ってワインを飲んでチョコレートが好きな人には、長生きの傾向があるというデータもあります。

 ひとつには、タバコに含まれるニコチンが、脳の神経伝達物質であるアセチルコリンを刺激して、脳を覚醒させている可能性があるのです。ニコチンで頭がシャキッとしますし、ワインに含まれるレスベラトロールと、チョコレートのポリフェノールが体内で抗酸化の働きをするので、理にかなっているようにも思います。

 喫煙を続けていても中年期に肺がんにならず、もし80歳になっても吸い続けていて肺がんにならなかったのであれば、その後にがんになる確率よりも、アセチルコリンを刺激して脳が元気になるメリットのほうが大きいという可能性はあると思います。

本原稿は、白澤卓二著『長寿脳──120歳まで健康に生きる方法』からの抜粋です。この本では、科学的に脳を若返らせ、寿命を延ばすことを目指す方法を紹介しています。(次回へ続く)