会社更生法の適用を申請したNOVAのスポンサーに決まったことで一躍注目を集めた、名古屋市の新興企業、ジー・コミュニケーション。3年半で26ものM&Aを行ない、近年急成長を遂げた同社の再生手法を探り、NOVA再生への課題を検証した。
「かつて取り組んだ再生案件のなかでも、一番といっていいほど自信がある」――。
NOVAのスポンサーに決まったジー・コミュニケーション(ジー社)の稲吉正樹会長(38歳)はこう豪語する。
多くの企業がスポンサーに名乗りを上げるなか、生徒や従業員保護の観点が評価され、スポンサーの地位を勝ち取ったジー社とはいかなる企業なのか――。
1994年、愛知県岡崎市に稲吉会長が開いた学習塾が母体となったジー社。2004年に外食産業の鈴庄(現グローバルアクト)のM&Aを手がけたことがきっかけで、次々と金融機関などから案件が持ち込まれるようになった。それ以来、手がけた案件は飲食業や教育産業などじつに26件(NOVAを含む)。なかにはジー・テイスト(旧平禄)、焼肉屋さかいなど上場4社も含まれる。
その結果、2005年5月期に約70億円だった連結売上高は、今期は9.5倍の668億円を見込む急成長。管理部門などで人材が枯渇してしまったNOVAと同じリスクが頭をよぎるが、「過去に再生した企業の優れたノウハウや人材をグループで生かしている」(稲吉会長)と不安はない様子だ。
再生手法は意外に“地道”である。基本は徹底した内製化と厳密なコスト管理。通常の企業なら名目だけの担当者を置いていることが多い店舗建設まで自前で行なう。現場監督やデザイン担当者をグループに抱え、床やペンキなどの資材も商社を通さず、自ら海外に調達に出向く徹底ぶりだ。
焼肉屋さかいを例に挙げれば、閉店した他の焼肉店を居抜きで引き受け改装することで、従来1億円程度だった出店費用を5分の1以下にまで落としたという。
旧生徒の満足度がNOVA再生のカギ
NOVAの再生でも、広告費や月間数千万円単位でかかっていた本部費の削減など、ムダなコストの削減が軸になる。市場実勢に比べて高い教室の保証金の減額や賃料の引き下げ交渉はすでに始まっている。じつは今、順次再開しているのは、契約の見直しに成功した教室である。