ビジネスアイデアのコンテストサイト「コトナス」で、日本にも“オープンイノベーション”の潮流が広がるか?コトナスのトップページのイメージ。毎月3~5件の「新着コンテスト」が追加されていく予定だ

 企業のプロジェクトの進め方は自前主義だけでなく、他社とのコラボレーション、アライアンスなどさまざまである。そして、近年注目されている手法が“オープンイノベーション”である。企画やアイデア、技術などを、企業が外部から公募などを通じて広く集め、新商品開発や新事業創出に役立てる手法だ。

 オープンイノベーションを最も積極的に推進している世界的企業の一つがプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)。2001年から本格導入し、今までに1000件以上の成功例を誇る。例えば「プリングルズ」のポテトチップス一枚一枚に絵や文字を印刷する技術アイデアを外部から調達し、製品化させた事例などが有名だ。

 また、玩具メーカーのレゴは自社商品のファンからアイデアを取り入れ、新商品開発につなげている。あるいはドミノ・ピザは、Facebookページで自社のユニフォームデザインを募り、優秀な投稿には賞金を与えるといった活動も展開する。そして日本では、無印良品を展開する良品計画がWEBサイト「くらしの良品研究所」を開設し、ユーザーの意見をもとに商品開発を進めていることが代表例だ。

 このオープンイノベーションの潮流に着目し、人材総合サービスのエン・ジャパンが2月25日に新たに開設するのが、ビジネスアイデアのコンテストサイト「コトナス」である。コトナスでは複数の企業が新規事業や新商品に関する「お題」をサイト上で出題し、企画を広く一般から集める。企業は応募された企画の中から優秀なものを選出・表彰し、それらの企画をもとに実際に事業化・商品化することも検討する。

「経済再生の兆しが見えはじめているなか、企業は新しい収益源を生むための取り組みを強化しようとしていますが、社内の人的リソースだけでは十分に対応できていないのが現状です。コトナスによってオープンに社外の知恵や技術、アイデアを集め、社内のリソースと掛け合わせることで、今までにない斬新な事業や商品開発が実現する可能性が高まるはずです」と、エン・ジャパンでコトナスの開発・運営を担当する小栗拓也氏は話す。

 一方でエン・ジャパンには、企画力のある優秀な人材との接点が生まれる。この人材が転職を検討する際に、自社の転職情報サイトや人材紹介サービスを活用してもらえる可能性が高まる。また、応募者は自身のアイデアや企画力を評価されることで、そのスキルを転職などの際にアピールすれば、セルフブランディングに活用できる。つまり、応募者、参画企業、エン・ジャパンに三者三様のメリットがあるわけだ。

 具体的には、サイトオープン時にTSUTAYA.comサイバード、ソネットエンタテインメントの子会社であるモーションポートレートの3社が「お題」を出すことが決まっている。TSUTAYA.comとモーションポートレートが自社サービスを活用した新しい事業や商品のアイデアを、サイバードが女性向けの新しいゲームの企画やアイデアを募集する予定だ。募集期間は約1ヵ月で、募集締め切り後は1次、2次選考に1ヵ月ほどかけて優秀な企画を3点選出し、「金・銀・銅」とランクを付けて表彰する。これが募集から表彰までの基本的な流れだ。

 その後も「お題」は毎月3~5社ずつ、さまざまな企業から出題される。各コンテストの優秀者にはポイントが付与され、ポイント獲得状況をサイト内にランキング表示し、定期的に上位者の表彰もしてインセンティブ(報奨金など)も提供する計画。これも応募者にとってモチベーションになるだろう。こうして、各企業の企画ニーズに対し、社外の個人が次々とアイデアを出していく“ビジネスアイデアのプラットフォーム”として、コトナスは機能していくわけだ。

「まずはサイトへの訪問者を集めることに力を入れたい。当面は月間訪問者1万人、1社当たりの応募数10件を目標としたい」と、小栗氏は言う。

 国内企業のオープンイノベーションへの取り組みは一部で見られるものの、欧米に比べるとまだ遅れている。そんななか、コトナスはその動きを加速させる取り組みとして注目したい。社内外の垣根を越えプロジェクト単位でビジネスを進める、新しいワークスタイルを促すことにもつながっていきそうだ。企画力に覚えのある人は、一度コトナスの門を叩いてみてはどうだろうか。

(大来 俊/5時から作家塾(R)