新日本酒紀行「加茂錦」創業地は加茂市、現醸造所は新潟市秋葉区に Photo by Aki Kawana

美しさが織りなす品位を探究!目指すは「好みの壁を越える酒」

 酒造り3年目で、難関の鑑評会で最高位を受賞した加茂錦酒造の田中悠一さん。きれいなうま味が広がる斬新な酒を次々と世に出し、「新潟に彗星現る」と瞬く間に人気銘柄に駆け上がった。酒蔵は家業ではなく、2009年に悠一さんの父が遠戚の酒蔵の再建を引き受けてのスタートだ。当時、悠一さんは新潟大学工学部の学生で、下戸の父が勉強のため集めた酒を、毎晩、千本ノックのようにきき酒した。全国の銘酒を知り理解を深めるうち、徐々に酒造りへの興味が湧く。両親は強く反対したが、大学3年で休学し酒造りの道へ。文献を読みネットで検索、先輩の蔵元や酒販店の指導も受け、多種多様な米と酵母で試行錯誤を重ねた。理系脳を発揮し、醸造道具も自作。排水の早さを重要視した浸漬装置は、数人掛かりの作業を1人で実現可能に。製麹時の厚みを可視化できる仕掛けも考案し、温度調整は遠隔で管理。品質向上に加え、労働時間の改善につながった。