昔の看板昔の看板 Photo by Yohko Yamamoto

蔵の歴史を伝え、
全量北海道産米で醸す北の地の酒

 令和に入り、11から16に酒蔵が増えた北海道。その酒造りは明治期の開拓から始まった。

 寒冷過ぎて稲が育たず、発酵せず、酒造りは困難を極めたが、本州米を使い、れんが造りで防寒し、道産の石炭をたくなどの工夫で、昭和初期には150蔵に増えた。だが、本州の酒が大量に流通し、消費嗜好の変化もあって酒蔵は激減。その流れを変えたのが酒米の開発だ。1998年の初雫を皮切りに、酒造適性に優れた吟風、彗星、きたしずくが誕生した。

 2009年から全量道産米の酒造りにかじを切ったのが、夕張郡栗山町の小林酒造だ。

 新潟から入植した初代小林米三郎が、1878年に「北の地で錦を飾る」と「北の錦」で創業。炭鉱街の酒で栄えた。

 現社長は4代目の米三郎さん。蔵の敷地は1万坪と広大で、赤れんが建築の蔵や住居など、13棟の国の登録有形文化財が点在する。売店を兼ねた蔵元北の錦記念館では、昔の酒器や、戦後GHQが簡易裁判を行った部屋などを展示。

 また、先代当主逝去後、明治築の自邸の存続が危ぶまれたが、4代目の姉千栄子さんが管理会社を設立し、14年に「小林家」の名で公開する。代々酒蔵を陰で支えた女性たちの仕事ぶりを伝える見学ツアーが人気だ。手打ちそばと酒が楽しめる錦水庵もあり、酒蔵をいろいろな形で楽しませる。

 新たな道産酒を模索する中、今年度、きたしずくの純米大吟醸酒が、全国新酒鑑評会で入賞し、フランスの日本酒鑑評会Kura Masterで金賞を受賞。

 北の地の酒、海外でも錦を飾る。

北の錦 純米大吟醸 雪心北の錦 純米大吟醸 雪心
●小林酒造・北海道夕張郡栗山町錦3-109●代表銘柄:北の錦、まる田●杜氏:南修司●主要な米の品種:吟風、彗星、きたしずく