米国は差し迫った大国間の戦争に対して備えができていない。これは広く理解されているが、米国の戦争準備に関する論評のほとんどは、三つの極めて重要な点を見落としている。それは、想定される中国との紛争の時間的見通し、米国の軍事力の構築と維持という兵たん上の課題、そして現在の装備品備蓄を補充・拡充することが困難だという産業上の問題だ。中国と戦争に突入すれば、勝敗は主に、高性能兵器システムではなく、伝統的な軍事力の要素によって決まる。新たな冷戦が始まった。その核心には、アジアの安全保障上の構造に関する米中間の根本的な意見の相違がある。最初の東西冷戦期の対立は、ソ連が米国に対し、欧州から、そしてより広範にはユーラシアから手を引くよう求めたことから生まれた。中国は現在、同じような野心を持っているとみられる。それを示しているのは、海上紛争が発生する可能性のある国際水域に米軍を寄せ付けない戦略的な取り組み、世界中で増加する中国の軍事基地、そしてインド太平洋地域の同盟諸国と米国の後方支援通信を遮断する能力の強化といった動きだ。ソ連時代のロシアが北大西洋条約機構(NATO)を破壊しようとし、それによって西欧から米国の政治的関与を排除しようと図ったのと同じように、共産主義の中国は現在、台湾の占領と、アジアにおける米国の同盟システムの分断を狙っている。
【寄稿】対中戦争に備えて米国ができること
問題は低強度紛争のみを想定して練られた米軍の戦略
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