冷え、だるさ、むくみ、疲れ、肩コリ、腰痛、便秘、不眠といったなんとなくの不調。『すごい自力整体』の著者・矢上真理恵さんは、「不調のほとんどは自力整体で解消できる」と語る。「自力整体」とは「整体施術のプロの技法」を自分におこなえる人気メソッド。今回も本書の監修者で「自力整体」の考案者である矢上裕さん(矢上真理恵さんのお父さん)をお迎えして、「老けこまない体」をテーマに話をうかがった。(構成/依田則子、写真/榊智朗)
監修:矢上 裕 矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家

こんな寝方は老け込みやすい? 整体プロがすすめる「寝る前の習慣」

どんな寝方が正解か?

――前回のインタビューでは快眠の秘訣をうかがいましたが、ちなみに左右片側ばかりを向いて寝るクセがあると、骨格や骨盤はゆがみやすいでしょうか?

矢上裕(以下「裕」):骨格や骨盤は、横向きに寝たくらいではゆがみませんので、安心してください。

 むしろ横向き寝や、寝返りは、体が無意識におこなう「自力整体」といえます。整体では次のように考えます。

「寝返りというのは、基本的に体のゆがみを取るための、睡眠中の我々の本能である」と。ですから、寝返りは止めないほうがいいんです。

――しかし寝返りが多すぎると熟睡できず、疲れそうですね。著書『すごい自力整体』でも書かれていたように、寝る前に「自力整体」などをおこなって「ゆがみ」を整えるのは大事ですね。

裕:そうですね。私たちの場合、とくに「自力整体」の授業がある日は体がしっかり整うので、布団に入ったら仰向けでバタンキュー。あっという間に朝が来て、仰向けの状態で目が覚めます。

 仕事が忙しく疲れ果てて、体を整えないまま布団に入ると、夜中に何回も寝返りをします。要するに、寝返りで「自力整体」をしているわけですね。

 寝返りは人間のゆがみを正すために必要なものですが、できれば朝までぐっすり仰向けで寝られるのがいいですね。

――たしかに朝、仰向けで目覚めると気分もいいですね。

裕:「自力整体」をおこない、ゆがみを整えた日は、自然に仰向けで寝られるはずです。そして寝返りの回数も少なくなる。

 つまり人は本来、仰向けで寝られるのが健康な状態なんですね。

――しかし右向きのほうがラク、左向きのほうがラク、という日もありますが、体からのサインでしょうか?

裕:横向きに寝る人は、無意識に弱っている内臓を上側にしている場合もあります

 たとえば、お酒の飲みすぎで肝臓が弱っている人は、左向きで寝たくなる

 なぜなら肝臓はお腹の右上にあるため、血流をよくするために肝臓を上側にしたほうがラクだからです。ほかにも、食べすぎて胃の調子が悪い人は、右向きに寝たくなります。これも胃のある左側が上になるほうがラクだからです。

 要するに、左右どちらかを向いて寝るのがいい・悪いではなくて、体が必要だと感じて自然におこなっているんですね。

――体が整っていれば、寝返りもうたず、朝まで熟睡できそうですね。

裕:そうですね。仰向け寝は体が整っているサインかもしれません。

――ちなみに「うつ伏せ寝」はあまり良くないでしょうか? 

こんな寝方は老け込みやすい? 整体プロがすすめる「寝る前の習慣」矢上 真理恵(やがみ・まりえ)写真左
矢上予防医学研究所ディレクター
1984年、兵庫県生まれ。高校卒業後単身渡米、芸術大学プラット・インスティテュートで衣装デザインを学び、ニューヨークにて独立。成功を夢見みて、徹夜は当たり前、寝るのはソファの上といった多忙な生活を続けた結果、心身のバランスをくずし動けなくなる。そのとき、父・矢上裕が考案し1万5000名が実践している「自力整体」を本格的に学び、心身の健康を取り戻し、その魅力を再発見。その後、自力整体ナビゲーターとして、カナダ、ヨーロッパ各地、イスラエルにて、クラスとワークショップを開催。さらに英国の名門セントラル・セント・マーチンズ大学院で「身体」をより体系的に学び、2019年に帰国。現在、国内外の人たちに自力整体を伝えながら、女性のための予防医学をライフワークにしている。

監修者:矢上 裕(やがみ・ゆう)写真右
矢上予防医学研究所所長、自力整体考案者、鍼灸師・整体治療家
1953年、鹿児島県生まれ。関西学院大学在学中の2年生のとき、予防医学の重要性に目覚め、東洋医学を学ぶため大学を中退。鍼灸師・整体治療家として活躍するかたわら、効果の高い施術を自分でできるように研究・改良を重ね「自力整体」を完成。兵庫県西宮市で教室を開講、書籍の出版やメディア出演などで注目され、全国から不調を抱える人々が続々と訪れるようになる。現在約500名の指導者のもと、約1万5000名が学んでいる。著書に『DVDで覚える自力整体』『DVD3分から始める 症状別 はじめての自力整体』(ともに新星出版社)など多数。遠隔地の人のために、オンライン授業と通信教育もおこなう。 写真/榊智朗