ピボットという言葉をご存じだろうか。この2、3年、米国のスタートアップ界隈でのキーワードの一つとなっているピボット(Pivot)は、バスケットボールで軸足を残してもう一方の足を動かす動作や、ダンスの片足旋回の方が馴染み深いだろう。しかし、ここでは事業転換を意味する。
特に、スタートアップが事業のあり方を模索している段階で行う大きな方向転換として知られてきたが、最近では大企業もピボットについて学び、自らの新事業や事業転換に生かそうと熱心だ。「ピボット」をテーマにしたカンファレンスが開かれるくらいだ。
しかし、やたらよく聞くバズワードにもなっていることもあり、ピボットの誤謬といった批判的な声も聞かれる。今回は、このピボットについて議論したい。
スタートアップにおいて
ピボットとは何か?
ピボットという言葉を広めるのに一役買った書籍「リーン・スタートアップ」の著者エリック・リース氏によると、ピボットとは「製品やビジネスモデル、成長エンジンについて根本的な仮説を新しく設定し、それを検証するための行動」である。簡単に言うと、事業の方向転換だ。当初の仮説がハズれていることはよくある。ターゲット顧客や製品のフィーチャーをはじめ、解決しようとする問題そのものや儲けの仕組みなど、大きな転換を余儀なくされることは珍しくない。
リース氏があげる主な10タイプは以下の通り:
・ズームイン型:(いくつかのうち)一つの機能にフォーカスする。
・ズームアウト型:それまでの製品がより拡大したものの一部となる、製品拡大。
・顧客セグメント型:ターゲット顧客の変更。
・顧客ニーズ型:想定していた課題が重要でなかったり、対価を支払えない場合は、対象とするニーズを変更あるいは再定義する。
・プラットフォーム型:アプリケーションからプラットフォームに、あるいはその逆の方向転換。
・事業アーキテクチャー型:低マージンで量を追うか、量を追わないが高マージンを狙うか。
・価値獲得型:どのようにマネタイズするか、売上をどう獲得するか。
・成長エンジン型:バイラル(クチコミ)、顧客定着化、(広告など)マーケティング投資、の三つがあるが、その転換。
・チャンネル型:販売・流通チャンネルの転換。
・テクノロジー型:用いる技術の転換。