学童の待機児童1万5000人で親たちから悲鳴、需要に供給が追いついていない縦割り行政が背景にPhoto:PIXTA

「保育園落ちた日本死ね」から7年。学童に入れない子どもが増えている。背景には何があるのか。「異次元の少子化対策」には学童のサービス拡充とあるが……。AERA 2023年4月10日号の記事を紹介する。

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「頭が真っ白になりました」

 埼玉県内に住む40代の女性は振り返る。春から4年生になる息子の学童への利用を申し込んでいたが、1月に「保留通知」の案内が市役所から届いたのだ。

学童の待機児童1万5000人で親たちから悲鳴、需要に供給が追いついていない縦割り行政が背景に埼玉県の女性のもとに届いた、学童の「保留通知」の案内。保留の理由として、「必要性を指数化し、高い方から利用許可を出させていただきました」とあった(写真:女性提供)

 共働きやひとり親家庭の小学生を預かる学童(放課後児童クラブ)。女性はパートで働くが、職場が遠く、朝早くから夕方まで家にいない。夫も協力してくれているが、息子を一人で留守番させるのはまだ不安。近くに預ける人はおらず、民間学童は経済的に無理。仕事を減らしたりするしかないのか。

「不安で夜中に目が覚めることもありました」

縦割り行政が背景に

<#学童落ちた>

 3月中旬、SNS上で、こんなハッシュタグをつけた投稿が相次いだ。

 厚生労働省の調査では、昨年5月1日時点で、学童への入所を希望しても断られた児童は1万5180人と、前年と比べ1764人増えた。SNSには<子育て支援してよ><国なんてクソくらえよ>など、学童に落ちた親たちの悲鳴や怒りが次々と上がった。

 思い出すのは、<保育園落ちた日本死ね!!!>のブログだ。2016年、「保活」で苦労した保護者が匿名で、保育園の待機児童問題の切実さを訴えた。これを機に保育園の待機児童問題対策が国の最大の争点になり、対策で待機児童数は減少した。

 待機児童問題に詳しい、東京大学大学院の山口慎太郎教授(家族経済学)は、かつての保育園の待機児童問題が学童に及んでいると指摘する。

「共働きが増え学童へのニーズが増えているにもかかわらず、その需要に供給が追いついていません」

 要因の一つに「縦割り行政」があると話す。

「学童の管轄は厚労省ですが、学童の設置場所の大半が小学校内になります。そうすると学校や教育委員会の協力も必要になり管轄は文部科学省です。互いに協力する体制を築くことになっていますが、学校側にとって学童は本来の業務ではないため、設置にあまり熱心でありません」