大阪ダブル選の争点「カジノIR」初期投資はUSJの7倍、雇用は1.5万人!計画の全貌とは大阪の夢洲エリア Photo:PIXTA

4月9日投開票の大阪府知事・大阪市長のダブル選挙(統一地方選挙)では、カジノを含む巨大複合施設「統合型リゾート」(IR)の是非を巡って、賛成派と反対派に割れている。しかし、大阪以外の地に住む人は、「日本にカジノが誕生」と聞いてもピンとこない人が多いだろう。そこで、大阪IRの主な動きと、巨額投資の全貌を解説する。(ライター 三浦健史)

日本人ハイローラーでさえ「大阪でカジノ?知らないなあ」

 カジノで大金を賭ける人を「ハイローラー」(high roller)と呼ぶ。「ダイスを転がす」(roll)から派生したスラングだと見なされている。日本にはカジノがないが、日本人ハイローラーは存在する。日本で一番有名なハイローラーは、大王製紙の創業家出身で元会長の井川意高氏だろう。カジノで106億8000万円を“熔かした”と著書で述べている。彼ほど知られていなくても、実は日本にも数多くのハイローラーがいる。

「日本人ハイローラーの中では、井川さんはベスト3に入るか入らないかくらい。上には上がいるよ」。都内某所でこううそぶくのは、自称「日本でベスト10に入る」という日本人ハイローラーだ。眉唾だとは思いながらも話を聞きすすめると、ふと彼が言った。「そういえば日本にもようやくカジノができるんだって?いつできるの?大阪?よく知らないなあ」――。

 自称ベスト10ハイローラーでさえ、この程度の認識である。一般の人はなおさら、カジノが日本にも誕生する可能性を意識していないだろう。

 ただし、こと大阪の地では様子が異なる。4月9日投開票の大阪府知事・大阪市長のダブル選挙では、カジノを含む巨大複合施設「統合型リゾート」(Integrated Resort。以下IR)の是非を巡って、候補者が賛成派と反対派に真っ二つに割れている。日本初のIRが計画されている場所は、大阪府大阪市の湾岸にある埋立地、夢洲(ゆめしま)である。計画を進めている賛成派は吉村洋文・大阪府知事が率いる大阪維新の会だ。

 日本でのカジノ建設は、神奈川県横浜市や和歌山県でも計画があったが、首長選挙のタイミングで反対運動が起こった後、いずれも計画は撤回されてしまった。「IR整備法」で最大3カ所とされているIRは、現状、「大阪府・市」と「長崎県」の2地域のみが候補地として残るのみ。かつては北海道(苫小牧市)や東京都(お台場)、愛知県(セントレア空港周辺)も候補地として名前が挙がっていた。

 それでは本当に、大阪でカジノIRが建設されるのだろうか? 実は、早ければ22年秋頃、大阪府・市が提出している「区域整備計画」を国が認定し、正式に大阪にIRが誕生することが決まるはずだった。ところが、岸田文雄首相は支持率低下を恐れてか、決断を先送りしたまま。おそらく認定は、このダブル選挙で大阪維新の会の勝利を待っているのではないだろうか。

 IR予定地の夢洲は、25年に開催予定の「大阪・関西万博」の場所でもある。現在は公共交通機関がなく、新大阪駅や伊丹空港から行くには不便な場所だ。そのため現在、大阪メトロ中央線の延伸と夢洲駅の建設工事が急ピッチで進められている。

次ページでは、大阪IRに関する主な動きをわかりやすい年表で振り返るとともに、1兆円に上る巨額投資の詳細を解説します。東京ディズニーリゾートやユニバーサル・スタジオ・ジャパンとの比較もしてみました。