「既得権」や「しがらみ」を批判する大阪維新の会に警戒感を隠さない大阪財界。カジノを含むIR計画に期待する声もあるが、バラ色の経済効果の試算などへの疑問は尽きない。そして、大阪を代表するあの巨大企業グループは明確にカジノと距離を置く。20回超にわたり公開予定の特集『「大阪」沈む経済 試練の財界』の#9では、異形の政治勢力に戸惑う企業人たちの本音と水面下の動向を明らかにする。(ダイヤモンド編集部 岡田 悟)
維新から「しがらみ」扱いの大阪財界
「革新府政と同じ」と距離を取って様子見
「ギャンブルを遠ざける故、(日本は)坊ちゃんの国になった。小さい頃からギャンブルをしっかり積み重ね、全国民を勝負師にするためにも、カジノ法案を通してください。猥雑なものは全部大阪が引き受ける」
2010年10月、大阪府知事だった橋下徹氏は、カジノの合法化を求める超党派の国会議員連盟の会合でこう熱弁を振るった。
橋下氏はこの年の5月、現大阪市長の松井一郎氏らと「大阪維新の会」を結成。大阪市長や府内の議会、首長ポストを次々と手中に収め、大阪では自民党でも歯が立たない最強の政治勢力となった。橋下氏自身は政界を引退するも、22年10月の衆議院議員選挙で、維新は大阪の19の選挙区のうち、候補者を擁立した全15の選挙区で自民党候補者らを打倒して全勝した。
こうした特殊な政治状況に複雑な思いを抱いてきたのが、大阪財界の面々だ。
企業や団体を「しがらみ」などと批判する維新は、各種団体への助成金などを次々と削減。そもそも橋下氏の知事就任後は経済団体との意見交換の機会を8年以上中断していた。相互の不信感は根強く、財界幹部からは「維新とは、かつての革新府政時代と同じ付き合い方しかできない」との声さえ上がる。
また、橋下氏がぶち上げ維新が推進する、カジノを含むIR(統合型リゾート)計画についても、大阪財界の内情は複雑だ。「ビジネスチャンス」「大阪経済の起爆剤はIRしかない」との期待もある半面、根強い反対論が存在。そんな中、大阪を代表するあの巨大企業グループは、多くの地元企業とは異なり、IR運営企業に出資せず、明確に距離を置いている。
次ページでは、大阪市や維新が推進するIR計画が抱えるリスクや、日本人客がカジノでスッた数千億円の売り上げが経済効果の前提となっていることなどの問題点を検証する。また、IRと距離を置く巨大グループの実名と併せ、出資を見送った理由についてグループ幹部の説明を紹介する。さらに、維新の代表交代によって国政とのパイプや地元財界との関係がどう変化するかについても探る。