7月12日に行われた東京都議選は、予想通り民主党の圧勝と言っていい結果だった。結果の議席数以上に得票率の差が大きい。2007年参議院選挙以上の自民党惨敗だ。

 都議選の結果を受けて今後政局がどのように展開するかは予断を許さない。政局分析は筆者の専門ではないが、気付いた点を二点述べておく。

 一つには、自民党は麻生太郎氏の扱いに手を焼くだろう。自主的に辞任してくれて、幾らかでも人気のある「表紙」(新総裁)に変えることが出来ればせめてもだろうが、前任者達のように親戚や息子に後を継がせるというような「質」に取ることが出来る利害が麻生氏にはない。「麻生降ろし」には、本人が拗ねて「それなら、解散!」という可能性がちらつく。麻生総裁での解散を避けようとするなら、一種のだまし討ちが必要だろう。

 また、少々気が早いが、自民党のここまでの不人気と退潮の原因は、安倍・福田・麻生と三代続いた内閣が、何れも実質的に「森内閣」だったことによるのではないか。各内閣何れも、人事権や政権運営に対して、在任中は最低支持率の記録を作るほど不人気だった森喜朗元首相が強い影響力を持っていることが明らかだった。週刊誌でいえば「表紙」を変えても、編集長と編集方針(=人事の方針)が同じなのだから、読者は「またか」と思ってうんざりする。野球で言えば、球団社長を替えても、監督を変えても、実質的なワンマン・オーナーが仕切っていることが見える某チームの人気が凋落したのと似ている。

 自民党の多くの議員は、既に「下野後」を視野に入れて行動を考え始めるだろう。政局の先行きは見通しにくい。毎週の上杉隆氏の記事が楽しみな展開だ。

 何れにせよ、都議選までの一連の地方選挙での民主党公認又は推薦候補の勝利は、「〇〇から政権交代」(〇〇は「静岡」とか「東京」とか)という、民主党が訴えるキャッチ・フレーズの「政権交代」を有権者が肯定的に評価したということではないか。この流れが、短期間で簡単に変わるとは思えない。遠からずあるはずの総選挙で、民主党が政権を奪取する可能性は一段と高まったと判断できる。

 こうなると、民主党が政権を取り、何よりも衆議院でも多数を占めるようになった場合に、どうなるのだろうかということが、現実的に気になる。