給与収入だけで老後資金をまかなえるのか不安に思う人が増えている。多くの人にとって「投資」が避けて通れない時代になってきた。資産を増やすという点で大きな選択肢の1つになるのが株式投資だ。「株投資をはじめたいけど、どうしたらいいのか?」。そんな方に参考になる書籍『株の投資大全ーー成長株をどう見極め、いつ買ったらいいのか』(小泉秀希著、ひふみ株式戦略部監修)が3月15日に発刊された。「ひふみ投信」の創始者、藤野英人氏率いる投資のプロ集団「ひふみ株式戦略部」が全面監修した初の本。株で資産をつくるためには、何をどうすればいいのか? 本連載では、特別に本書から一部を抜粋・編集してその要旨をお伝えしていく。

【株式投資必修講座 ステップ 5】株が割安かどうかを考える指標、PFR(株価収益率)の賢い使い方Photo: Adobe Stock

割安さを計る指標、PERについて

 株の割安さを考えるための方法として最も一般的に使われているのは、PER(株価収益率)という指標です。これは、会社の収益力から見て株価が割高か、割安かを見るものです。

 PERは、株価を1株益で割り算して求めます

 1株益は、1株当たりの純利益のことです。会社が1年間で稼ぐ税引き後の利益が純利益であり、これを発行済み株数で割り算したものが1株益です。

 この1株益に対して株価が何倍なのか、という倍率がPERなのです。

 状況によっても変化しますが、世界の株式市場の歴史を振り返ってみると、PERの市場平均は、だいたい10~20倍くらいの範囲を行き来しています。

 そうしたことから、株式市場においては、PERはだいたい15倍前後が標準的な水準だとみなされています(下図)。

PERは、成長性も加味して判断する

 PERの標準的な水準は15倍程度ですが、「PERが15倍より低いから割安」とか、「PERが15倍より高いから割高」というように単純には判断できません。PERの水準は、その会社の成長性、財務的リスク、属する業界など様々な要因によっても左右されます。

 PERを左右する要因の中で、特に重要なのは、その会社の成長性です。

 たとえば、将来性が高く評価されている場合には、「PER20倍でも割安」と考えられることが多いです。逆に、将来性に不安がある場合には、「PERが10倍でも割高」だと考えられることがあります。

 上図では、1997年当時のPPIHのPERを計算しました。会社四季報に出ている同社の1株益の予想値(98年6月期)は126円でした。

 上図の安値の時に、株価は1900円まで下落しているところでした。株価1900円で1株益が126円なら、PERは、1900円÷126=15倍です。

 これは、ごく標準的な水準とはいえますが、将来性の高さ(成長性)を考えるとPER20倍以下の水準は、かなり割安だと考えられます。

 実際にその後、株価は100倍以上に上昇しているので、こうした成長力の高さを考えると、この時の株価1900円は激安だったといえます。

 だいたいの目安ですが、1株益が2倍に成長すると考える投資家が増えると、PERは15倍の2倍の30倍が適正な水準として意識され、1株益が3倍に成長すると考える投資家が増えるとPERは15倍の3倍の45倍が意識されるようになります。

 ただ、利益が2倍になるといっても、それが10年も20年も先のことだと株価には反映されづらいです。

 一方、3~5年先くらいに利益が2倍、3倍になる見通しなら、それは株価に反映されやすいです。そうしたことから、成長性とPERのおおよその対応関係は、下図のようになると考えられます。

 PERを見る際の1つの目安として、参考にしてください。

小泉秀希(こいずみ・ひでき)
株式・金融ライター
東京大学卒業後、日興證券(現在のSMBC日興証券)などを経て、1999年より株式・金融ライターに。マネー雑誌『ダイヤモンドZAi』には創刊時から携わり、特集記事や「名投資家に学ぶ株の鉄則!」などの連載を長年担当。『たった7日で株とチャートの達人になる!』『めちゃくちゃ売れてる株の雑誌ザイが作った「株」入門』ほか、株式投資関連の書籍の執筆・編集を多数手がけ、その累計部数は100万部以上に。また、自らも個人投資家として熱心に投資に取り組んでいる。市民講座や社会人向けの株式投資講座などでの講演も多数。
ひふみ株式戦略部
投資信託ひふみシリーズのファンド運用を担うレオス・キャピタルワークスのメンバーにより構成された本書監修プロジェクトチーム。
ひふみ投信:https://hifumi.rheos.jp/