いつも他人と比べてしまう」「このままでいいのか、と焦る」「いつまでたっても自信が持てない…」。仕事や人生に悩んでしまった時、どう考えればいいのでしょうか。『機嫌のデザイン』の著者であり、数々の名言がTwitterで話題となった、プロダクトデザイナー・秋田道夫氏の「毎日を機嫌よく生きるためのヒント」を紹介します。

自分の「居心地」に対して、もっと敏感になっていいPhoto: Adobe Stock

機嫌のよさを維持するために、心がけていること

自分の「居心地」に対して敏感になり、居心地のよい状態を保つ努力を惜しまないことでしょうか。

ちょっと嫌だな、疲れるなと感じたら、そこから離れます。

それは場所に対してもそうですし、人に対しても同じです。

たとえば、電車に乗った瞬間、同じ車両の中にいかにもイライラしている人がいると感じたら、移動して車両を移ります。

友人とカフェに入ってコーヒーを注文した後でも、空調の位置が悪くて落ち着かなかったら、遠慮なく席を替えてもらったり、場合によっては店を変えたりします。

差し障りがなければ我慢はしません。

「自分が先にそこにいたから」と妙にこだわる人もいますが、わたしは負の影響を受け続けるほうが余程耐えられないのです。

傾向として、どうも気持ちに余裕のない人がそばにいるとダメですね。

忙しない人が近くにいると、わたしまで気忙しくなってしまって、頭の中でその人の日常生活を思うようになって財布を置き忘れたりしたことがあります。

わたしに限らず人は環境に影響を受ける生き物ですから、周囲に対して敏感であることは非常に大事なことだと思っています。

よく自転車に乗りますが、自転車についているベルをほとんど鳴らしません。

「わたしが通るからどいてちょうだい」と鳴らすときのベルです。

ぶつかりそうな人や対向車がいたとしたら、自分からよければいい話で。

相手を動かすための働きかけはしません。そんなことをされた側が愉快なわけはありません。

そんな些細なことにも気を使うのは、わたし自身が小心で怖がりだからです。

自分が小さい人間だと知っているから、できるだけ人と揉める原因となることを排除しているのだと思います。

その一方で、こと仕事になるとそんなに怖がりでもないから面白いですね。

ある有名なラグビーの選手が、「運転免許があるけれど街中ではどこから車や人が出てくるか分からず車が運転できないので、人にお願いしている」と聞いたことがあります。

その気持ちがすごく分かるわけです。

仕事は「相互に条件を理解している」ので大胆にもなれますが、日常では誰がどんな気持ちでいるか分からないので怖いんです。

怖いのが当たり前だと思いますが、怖がりの程度ですね。

わたしがいつもできているかは分かりませんが、総じて「負けて勝つ」という結果にはなっていると思います。

今年七十歳になりますけれども、おかげさまで現役で面白い仕事をいただいています。

どこまで押してどこで引くのが適度なのかというバランスの見極め方も、経験によって精度が上がっていくものなんです。

なんだかこの歳になって、「人生の辻褄が合ってきた」気がしているんです。

わたしは本当に幸せ者ですね。

(秋田道夫著『機嫌のデザイン まわりに左右されないシンプルな考え方』から一部を抜粋・改変したものです)