励ましたつもりで声を掛けたのに、逆に相手が落ち込んでしまった。ミスが多い部下にいくら注意しても直らない……自分が期待するように、相手にふるまってもらいたい時、頭がいい人はどんな風に声かけをしているのか? 書籍『頭のいい人の対人関係 誰とでも対等な関係を築く交渉術』の筆者が、そのテクニックを伝授します。(教育コンテンツプロデューサー/株式会社士教育代表取締役 犬塚壮志)
なぜ一部の人たちは、血液型で性格を判断したがるのか
あなたの周りには「オレ、B型だから飽きっぽいんだよね」「○○さん、O型なんだ。けっこう大雑把でしょ?」など、血液型で性格を語る人はいませんか?
これは、「ラベリング」の一種です。ラベリングとは心理学の用語の1つで、「この人は○○な人」とラベルを貼って、自分や他人の認識を固定させる行為のこと。ちなみに、私も大学で専門的に研究するまで知らなかったのですが、血液型の違いとは、赤血球の表面から出ている「糖鎖」と呼ばれるものの構造の違いでしかありません。この糖鎖の構造が人間の性格に何らかの影響を与える可能性はありますが、そのメカニズムはまだ明らかになっていないのです。
血液型と特定の性格の特徴に相関がないことは国内外の研究で明らかになっているのに、それでも人間の血液型と性格を紐づける人が非常に多いのはなぜでしょうか? それは、人がラベリングを好む生き物だからです。
「○○は、△△だから起きた」「□□さんは、××なタイプだから」……人の性格、物の価値などにラベルを貼ると、納得し、安心する。ラベリングにはそんな心理効果があります。ということは、ラベリングは当然、依頼や提案、交渉の場でも有効に働きます。
たとえば、仕事仲間のAさんや同僚たちに「Aさんは本当に気が利く人だから」と声を掛けていると、Aさんは本当に気が利くふるまいをするようになります。相手はラベリングによって影響を受け、結果、こちらの期待する良好な関係を作ることができるのです。
あなたに仕事を丸投げしてくる同僚がいて、モヤモヤしているとしましょう。相手に「○○さん、丸投げしないで、あなたもちょっとくらいは仕事を分担してよね!」と伝えると、すっきりはしても衝突しかねません。
そこで、日頃から「○○さんって、困ったときにいつも助けてくれますよね」「○○さん、ここぞというとき分担してくれて、本当に救われます」と伝えてみましょう。すると、相手は「仕事の分担をしっかりやらないといけないな」と思うようになり、行動にも変化が生じます。